イーロン・マスク氏が狙うのは「自動運転技術」の先駆者か トランプ氏に近づく理由を前嶋和弘教授が解説
テレビ愛知
私は関税男(タリフマン)だ――。ドナルド・トランプ氏のアメリカ大統領就任が1カ月後に迫り、世界は大きな変化のときを迎えています。トランプ氏は中国からの輸入品に対して関税を10%追加し、カナダやメキシコからの輸入品には25%の関税をかけると表明しました。日本の自動車メーカーに大きな影響が予想されます。 また、トランプ氏は気候変動対策の見直しとEV販売を促進する政策の廃止を訴えており、エネルギー政策の大転換が進行中です。
トランプ氏のエネルギー政策とマスク氏の立場
「化石燃料を掘って掘って掘りまくれ」と訴えるトランプ氏は、エネルギー政策の大転換を目指しています。一方、電気自動車メーカー「テスラ」のCEO、イーロン・マスク氏が政府の要職につくことが決まりました。エネルギー政策では真逆の立場にいる2人が協力する理由は何でしょうか。
自動運転技術の規制緩和へ
上智大学教授で現代アメリカ政治外交が専門の前嶋和弘教授は、マスク氏がトランプ氏を支援する理由は「規制緩和」にあるといいます。主な狙いは自動運転技術に関する規制緩和。トランプ次期大統領の政権移行チームは、自動運転システムを搭載した車両での事故について、メーカーの当局への報告義務を廃止するよう検討しているのです。 ロイター通信によると、2024年10月15日までの自動運転の死亡事故は45件のうち、40件はテスラの車両でした。テスラの車両での自動運転事故報告が減少すると、マスク氏のビジネスにとって大きなメリットとなります。
中国との競争と自動運転技術の展望
「マスク氏にとって次の大成長産業の発展の鍵を手に入れた」と前嶋教授は話します。 「自動運転で中心になっているのは、マスク氏の企業と中国。しかし、中国は規制が緩いためマスク氏は少し不利でした。トランプ氏の政権になることで、マスク氏も充分に実験ができ、世界のシェアを固めることができるとみているかもしれません」
民間企業と政府の利益相反問題
さらにトランプ氏に対して多額の献金をしていたマスク氏。民間企業がメリットになるように動くことに問題はないのでしょうか。前嶋教授に聞くと「明らかな利益相反になる」と指摘します。 「これが認められていいのか、と。これからのビジネスの教科書の議題になるような内容だと思います」。 マスク氏とトランプ氏の関係が認められることは、将来的に疑惑を残すといいます。
「そもそもマスク氏はインターネット事業でさまざまな契約を受けています。その契約を受けている人が献金を持って国のトップに近寄り、政府効率化省というほかの規制に関与できる立場になることを許していいのか、疑惑が残りますね。 マスク氏は次の技術とお金を得られますが、果たして世界やアメリカが良くなったかというと、トランプ政権が終わったあとも疑問が残る可能性があります」
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