石丸伸二氏が“安芸高田市長”時代に「法令違反」!? 行政運営手法の問題点とは
地方自治の「二元代表制」の重要性
前編で取り上げた「道の駅への無印良品出店誘致」(違法・無効)も含め、いずれの専決処分も、石丸氏にとっては民意を体現するための行動だったかもしれない。 しかし他方で、市議会も住民に直接選挙された議員によって構成され、民意を体現する存在だということを忘れてはならない。 事実、石丸氏と市議会の「対立関係」は動画編集などによって一部が恣意的に切り取られ、多分に誇張して広められている。 『議会だより』等の公的資料において、実際の議論の内容や議決の状況を確認すれば、市議会が民意とかけ離れた活動をしていたのでも、石丸氏と全面的に対立しようとしていたのでもないことは明らかである。 どれほど優秀な為政者でも過ちを犯す。それは「人柄」や「真面目さ」とも無関係である。自分こそが最も的確に民意をとらえているという認識は例外なく「思い上がり」であり、権力の暴走を生む根源となる。 そして、権力の暴走が衆愚の俗情や浅薄な正義感と結託すると歯止めが利かなくなり、取り返しのつかない事態を引き起こしかねない。このことは歴史が証明している。 幸田教授も指摘するように、憲法・地方自治法が定める首長と議会の「二元代表制」は、民意を反映する2つの異なる機関に権力を分担させることにより、権力の暴走を防ぐ精巧なしくみといえる。 安芸高田市で起きたことは、わが国に暮らすすべての人にとって他人事ではない。どの自治体でも起こりうる。石丸氏の件をきっかけに、わが国のみならず多くの国の地方自治制度において二元代表制がとられていることの意味を、よくよく考えてみる必要がある。
弁護士JP編集部