石丸伸二氏が“安芸高田市長”時代に「法令違反」!? 行政運営手法の問題点とは
「認定こども園」基本構想費の予算化
最後に取り上げるのは、石丸氏が市長退任直前の6月に行った「認定こども園」の「基本構想費」613万8000円の専決処分による予算化についてである。 これは、建て替え・移転の必要性がある「吉田保育所」「みつや保育所」「吉田幼稚園」の3施設を統合し、公園と一体型の複合施設として移設する計画に関するものである。 石丸氏はこの計画につき、2023年3月、同年12月の2回にわたり予算案を議会に提出したが、いずれも修正・削除(否決)された。ところが、石丸氏は退任直前の5月17日に、同案を予算化する専決処分を行った。 この専決処分について、幸田教授は、地方自治法179条1項の専決処分の要件に該当するかを吟味するまでもなく違法であり、「無効」だと指摘する。 幸田教授:「そもそも議会が否決した案件を専決処分することはできません。 議会が議決すべき事件を議決しないままでいるというのであれば、専決処分の対象になり得ますが(地方自治法第179条1項参照)、本件の場合は違います。議会がすでに議案を否決し、意思を明確に示しています。 首長が議会の意思表示を無視して専決処分をすることは、議会が議決権を有していること自体を否定する行為です。 専決処分の要件に該当しませんので、違法であり、無効です」 市側の資料においては「安全上の観点から、早急に認定こども園の整備を進めなければならない」と記載されている。 また、市議会側の資料である「議会だより80号(2024年2月15日発行)」でも「(3施設の)移転・新設は市政の喫緊の課題である」と記載されており、前提となる問題意識が市長と議会の間で共有されていたことがうかがえる。 石丸氏は市長としてどのようにすべきだったのだろうか。 幸田教授:「議会が否決しているということは、議会の意思が明確に示されているので、長は、議会の意思に従って、その後の対応策を検討すべきです。 石丸氏は、統合自体を白紙に戻し、改めてどうするのか検討し直さなければなりませんでした。 それなのに、議会の意思に反して統合を進めるということは、市長として絶対にやってはならないことです。憲法・地方自治法が定める首長と議会の二元代表制そのものを否定する行為といわざるを得ません」 専決処分の効力については、一律に「議会の承認を得られなくても有効」という認識が広がっているように思われる。しかし、それは誤解である。前編で幸田教授が指摘したように、地方自治法179条1項が定める適法要件をみたさない違法な専決処分は「無効」とされる(これまでの裁判例でも無効と扱われている)。 本件の専決処分は、法の要件をみたさないのに加え、二元代表制の観点からも正当化の余地がないことであったといえる。