ウクライナは「テロ国家」となりロシアを怒らせ、戦争継続を選んだ
トランプはゼレンスキーを就任式に招待せず
たしかに、こうした「テロ」は、テロを受けた側の復讐心を駆り立てるだけだ。だが、それがねらいであるとすれば、どうだろう。ゼレンスキーは、テロをあえて頻繁に引き起こし、プーチンを怒らせ、ウクライナ戦争の終結・和平に前向きにならないように促しているのではないか。そのような観測も成り立つのだ(12月17日付「ストラナー・ウクライナ」を参照)。 12月19日、プーチンは「今年の結果」という形式で、直通電話と記者会見を合わせて4時間半の間に76の質問に答えるなかで、「我々は前提条件なしに対話を行う用意がある」と繰り返した。ただ、「合法的な相手としか合意書に調印できないという問題がある」として、いまのところ、プーチンは、「合法的な相手とは議会(ラーダ)と議長である」とのべた。 その発言の意味するところは、ゼレンスキー大統領の任期は今年5月20日に切れており、ゼレンスキーの大統領としての合法性に疑問を投げかけているのだ。この問題は、拙稿「いつまでも戦争止めないゼレンスキー…それは止めたら自分が追放されるから」に書いた通りだ。 トランプ自身、来月20日にワシントンDCで行われる大統領就任式にゼレンスキーを招待していないと、12月16日に話した。「彼が来たいのであれば、歓迎する」とも付け加えたが、トランプがゼレンスキーの合法性にどこまで疑問をもっているかは不明だ。 先に紹介した国民との対話のなかで、プーチンはキリロフ殺害を「テロ行為」であるとした。「それは、多くの人々の生命を危険にさらす方法で行われた殺人だからだ」という。 プーチンは、ウクライナ政権が「ロシア連邦の多くの市民に対して、そのような犯罪、テロ犯罪、テロ行為を繰り返してきた」と話した。 ウクライナを「テロ国家」とすでにみなしてきたプーチンにとって、ゼレンスキーによる攪乱(かくらん)は、あまり効き目がありそうもない。ただし、ウクライナ撲滅を唱える過激な右派であるドミトリー・メドヴェージェフ元大統領(現安全保障会議副書記)のような人物をひどく刺激していることは間違いない。
塩原 俊彦(評論家)