韓国大統領の職務停止で首相の代行体制始動、野党代表は主導権掌握へ「協議体」設置を提案
【ソウル=桜井紀雄】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が14日、国会の弾劾訴追案可決で職務停止となったことを受け、韓悳洙(ハン・ドクス)首相による大統領権限代行体制が始動した。一方、革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は15日、混乱を収拾させるため、与野党を含む国会と政府による「国政安定協議体」設置を提案。次期大統領選を見据え、政局の主導権掌握に向けた動きを活発化させた。 ■国防トップは空席、首相も捜査対象 韓氏は14日、大統領権限代行となると早速、国家安全保障会議(NSC)を開き、「こうした時こそ国の安保を最優先すべきだ」と強調。北朝鮮が挑発行為を画策できないよう隙のない備えを指示した。談話で「韓米、韓米日、友好国との信頼維持に内閣が最善を尽くす」と表明した。 ただ、尹氏が宣布した「非常戒厳」を実行した金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相は逮捕され、尹氏が職務停止前に指名した後任の国防相候補も2人続けて承諾を拒否されたため、国防トップは空席の状態だ。国内の治安の責任を負う行政安全相も辞任し、警察庁長官とソウル警察庁長官が逮捕される非常事態となっている。韓氏自身も捜査対象の立場だ。 ■野党トップは協調性をアピール 野党は戒厳に絡み韓氏の弾劾訴追も進める方針だった。だが、李氏は15日の記者会見で「国政の混乱を招きかねない」と述べ、弾劾方針を撤回。「韓国の正常化が急がれる。全政党とともに国政安定と国際的信頼の回復に向けて積極協力する」と表明した。米韓同盟を守り、周辺国との協力を重視する考えも示した。 李氏は尹政権や保守系与党「国民の力」との対決姿勢を鮮明にしてきたが、次期大統領選を見据え、内政や外交を担える協調性がある点をアピールする狙いとみられる。 国民の力は尹氏弾劾訴追の採決で大半の議員が反対する一方、一部議員が賛成に回り、分裂が決定的となった。最高委員5人全員が辞意を示し、機能不全の状態だ。党の権性東(クォン・ソンドン)院内代表は15日、李氏が提案した超党派と政府による協議体設置を拒否する立場を示した。