「気に入らない党員のカジュアル除名横行」除籍・解雇になった共産党員が党を提訴 代理人「結社の自由にも限度ある」
「ルールを作る側がルールを守っていなかった」
神谷氏側の代理人で労働問題に詳しい松尾浩順弁護士は「本件のポイントは2つある」と解説する。 「1つ目のポイントは、神谷さんの話にもあった通り、除名と除籍の違いです。 除名の手続きは、それなりにしっかりとした手続きが必要になりますが、神谷さんの場合は、非常に安易な手続きを経て、除籍となりました。 さらに、除籍=解雇そのものになっていることから、安易な手続きで解雇できてしまう仕組みになっており、問題があると考えます。 そして2つ目はパワハラです。現在、国を挙げて『ハラスメントを防止していこう』としているなかで、共産党でもこれまで当然、ハラスメント対策を掲げてきました。 しかし、本件はまさにルールを決める側が、ルールを守っていなかったという事案です。はたして、このままの状態で共産党にルールを作るだけの権限があってよいのか。こうしたことも問われる裁判になると思います」
「何をやってもいいと考えているのでは」
また、同じく神谷氏側の代理人の平裕介弁護士は「共産党は過去の判決を理由に、『政党であれば何をやってもいい』と考えているのでは」と指摘する。 平弁護士が言う判決とは、共産党幹部の除名の当否が争われたいわゆる「共産党袴田事件」のこと。最高裁が1988年12月に下した判決では、下記の判断が示されている。 ・「政党が党員に対して行った処分は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権が及ばない」 ・「政党が党員に対してした処分の当否は、政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り適正な手続きに則って処分の判断がされたか否かによって決すべき」 「通常、事業者などが労働者を解雇する場合、それなりの手続きを踏むかと思います。共産党も本来、そうした手続きを重視してきた政党ではないでしょうか。 しかし、神谷さんの場合、ずさんな手続きしか経ておらず、除籍の手続きでも、共産党では『最後に協議をすること』と定めているのに、その協議も実施されませんでした。 こうした共産党の態度の背景には、『結社の自由があるから』『最高裁の判決があるから』という発想があるのではと推察しています。 当然、今回の裁判でも、共産党側が『司法審査の対象とならない』と主張してくることが考えられますが、本件では除籍を理由に解雇にもつながっていることから、司法審査の対象であると考えています。 そして、個人の表現の自由や、労働基本権、パワハラを受けない人格権を守るためにも、『政党だから、結社の自由があるから』という理屈には限度があるということを、訴訟で明らかにしていきたいです」(平弁護士)
弁護士JP編集部