【SHOGUN 将軍】真田広之vs“フジヤマゲイシャ”の20年 「日本人が見て恥ずかしくないものに」という執念
「これは日本じゃないよ」
「渡米後、サムライやヤクザの役でいくつかの作品に出演していますが、正直パッとしない役どころも多かったですよね」 そう振り返るのは映画評論家の北川れい子氏だ。 「これまでの出演作には、今回の『SHOGUN 将軍』とは対照的に、日本文化の描写に違和感の多い作品もありました。例えば、忠臣蔵をモチーフにした『47RONIN』(2013年)は“ファンタジー要素”も売りだったのでしょうが、それにしても日本の時代劇とはあまりにかけ離れた内容で、“サムライ”へのリスペクトを感じられるものではありませんでした」(北川氏) 「47RONIN」以外にも、「ウルヴァリン:SAMURAI」(2013年)に見られる「ヤクザ」や「ニンジャ」のステレオタイプ的な表現や、TVシリーズの「ウエストワールド」での不自然な日本語など、真田の出演作には“トンデモ”な日本表現の目立つ作品が見受けられる。 こうしたハリウッドの“フジヤマゲイシャ的表現”に関しては、当の真田も雑誌のインタビュー記事などでその苦悩を覗かせている。 真田がことあるごとに口にしてきたのは、「ハリウッドの日本描写の誤解解消に一役買いたい」という使命感だった。 ハリウッドの作った時代劇としては“ちゃんと日本している”という評価の「ラスト・サムライ」ですら、製作過程では「これはやばいぞ」と感じる場面が少なくなかったと、映画誌のインタビューでも率直な感想を述べている。 <彼らもよく勉強していて、あの時代をリアルに再現してくれています。でも衣装や小道具の使い方など、ちょっとしたニュアンスで『これは日本じゃないよ』というところはあるんですよね。つまり彼らは日本と中国の微妙な違いがわからないわけです。それが今までのハリウッドの問題だったと思いますね。だから、これはやばいぞというところは、手分けしていろいろ言っていくようにして、それは最後まで貫きました。もうこれを最後にほされてもいいや! というくらい(笑)>(キネマ旬報2003年12月15日号のインタビュー記事内で) 根底にあったのは「日本人が見て恥ずかしくないものにしたい」という強い思いだった。