【SHOGUN 将軍】真田広之vs“フジヤマゲイシャ”の20年 「日本人が見て恥ずかしくないものに」という執念
時代劇経験が豊富な日本人スタッフの配置にも尽力
「作品のオファーがあるたび、積極的に海外でキャリアを積み、日本人が海外映画で活躍するための土壌を作っていきたい、という思いと、依然として残るハリウッドの誤った日本観との間で、苦しい思いをしたと思いますよ。でも、諦めることなく、自身がこれまで吸収してきた“日本の時代劇”というものを、見事にSHOGUNで結実させた。素晴らしいことだと思います」(北川氏) 授賞式の真田の短いスピーチの中にも、日本の時代劇への想いが滲んでいた。 「これまで時代劇を継承して支えてきてくださった全ての方々そして監督や諸先生方に心より御礼申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り、国境を越えました」(作品賞受賞時の真田のコメント) 「とても風格のあるスピーチでした。自分の手柄だと拳を振り上げるのではなく、日本の時代劇を作り上げ、そして継承してきた先達やスタッフへの敬意で溢れていた。真田さんのこれまでの道のりに思いを馳せ、胸が熱くなりましたね」(北川氏) プロデューサーとして、時代劇経験が豊富な日本人スタッフの配置にも尽力したという真田。ラスト・サムライから約20年、ハリウッドで「日本の時代劇」が結実したのは、間違いなく真田の功績と言えるだろう。 作品が受賞した18部門のうち、演技で獲得したのは4部門で、残りは美術や技術に対して贈られた賞だった。日本の描かれ方にしても、“切腹しすぎ”との指摘がSNS上に散見されるものの、日本の視聴者が「おや?」と思う点はわずかだろう。少なくとも、ハリウッドの“フジヤマゲイシャ”とは、一線を画すクオリティといって良いはずだ。 惜しむべきは、サブスクリプションサービスの「ディズニープラス」でないと、作品を視聴できないことだ。北川さんもこう期待を口にする。 「せっかく細部までこだわった素晴らしい作品なんですから、全10話あるとはいえ、工夫してぜひ劇場でも上映して欲しいですね。私のような古くからの映画ファンは、やはり映画館の大画面で作品を観たいという人が多いと思いますよ」(同)
デイリー新潮編集部
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