【フェイク情報に注意3】大半の人はだまされる うその拡散者にならないためには
SNSで誰でも他の人の投稿やニュースを簡単に引用できる時代。人をだます目的で発信されたうそ「フェイク情報」の発信者になってしまう恐れもある。拡散しないためには何を心掛ければよいか、フェイク情報について研究している山口真一先生に聞いた。(木和田志乃)
「正義感」で拡散が進む
―フェイク情報が拡散される理由を教えてください。 2018年に発表された米国の大学の研究では、「フェイク情報は真実の6倍のスピードで拡散される」とわかっています。人は怒りや不安を感じた時に、その感情を刺激するようなフェイク情報を信じてしまいやすくなります。 加えて「この人は許せない」「この事実を広める必要がある」など、その情報が社会や人のためになると感じたら、正義感から拡散してしまうのです。
フェイクの発信で罪に問われる可能性も
―フェイク情報を意図的に発信したり拡散したりすることは、どんな罪に問われますか? フェイク情報を拡散することで社会に与えた影響によっては罪に問われることがあります。例えば2016年の熊本地震の直後、Xで「動物園からライオンが逃げた」というフェイク情報が拡散された事件があります。情報を信じた人々によって熊本市動植物園に問い合わせが殺到し、職員が対応に追われました。このときは投稿者が偽計業務妨害で逮捕されています。 与えた被害の内容によって罪は変わります。誰かの名誉を毀損(きそん)している場合は名誉毀損罪、誰かを侮辱した場合は侮辱罪として罪に問われるのです。
「自分はだまされる」意識を持って
―救助要請の拡散など、中には善意からフェイク情報を広めてしまうこともあります。 まず、「自分はだまされる」ということを知っておいてください。私の研究では、フェイク情報に接したとき、フェイク情報であると見抜ける人は14%程度。つまり大半の人は「フェイク情報である」と正しく判断できません。 「自分はだまされない」と自信を持っている人ほどだまされています。情報リテラシーが高く、批判的思考をする人ほどフェイク情報を拡散しない傾向です。対して「自分は批判的思考ができている」と自信がある人はむしろフェイク情報を信じやすく、拡散しがちだという結果が出ています。つまり、謙虚な気持ちで慎重に情報空間に接することが大事ですね。 ―情報を拡散する時は、どんなことを心がければよいですか? すべての情報について検証することはできませんが、情報を拡散したくなったときだけでもチェックする癖を付けましょう。例えば、他のメディアの報道や専門家の意見を確認してみたり、情報源が何か確認してみたり、その画像が本物か「画像検索」をしてみたりなど、ファクトチェックをしてみてください。 チェックをしても分からないことはたくさんあります。分からない場合は拡散しないことです。自分がフェイク情報の拡散者にならないように意識してください。
やまぐち・しんいち
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。専門は計量経済学、社会情報学など。主な著作に『ソーシャルメディア解体全書』(勁草書房)、『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)、『なぜ、それは儲かるのか』(草思社)、『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)などがある。内閣府「AI戦略会議」などの複数の政府有識者会議委員も務める。
高校生新聞社