暗号資産レンディング市場の現在地──波乱の2022年から回復を見せる
リスク管理の実践
レンディング事業者はリスク管理を重視しており、損失を出さず、取引相手の信頼を維持することに注力している。2021年とはまったく対照的に、詳細なデューデリジェンスと資産の検証は、現在では初期に行う標準的な手続きとなっている。 融資の中では「過剰担保型」が主流となっており、多くの借り手は担保を三者間取引として、カストディアンに預けることを求めている。市場シェアがはるかに小さい無担保融資は、現在では一般的に十分な資本を持つ特定の借り手に限定されており、しばしば構造的な保護措置や継続的な監督要件が含まれている。 透明性も重視な要素となっている。つまり、多くのレンディング企業とその資本提供者は、借り手の融資の使用状況を監督するための可視性を求めているからだ。一方、借り手は担保が保管されているウォレットへの継続的な監視を求めている。
新規参入者と革新的なテクノロジー
市場に参入する新規レンディング企業の増加は、2021年以降、これまでで最大規模となる可能性がある。シグナム(Sygnum)、Amina、Dukascopyなどのスイスの銀行が市場に参入している。またキャンター・フィッツジェラルド(Cantor Fitzgerald)が20億ドル(約2900億円)の資本金で新しくビットコインファイナンス事業を発表したのを筆頭に、従来の金融市場から大手金融機関もこの分野に参入している。これらの新規参入者は、より広範な取引コミュニティおよび暗号資産の既存レンディング企業の両方に資本を供給し、最終的にはより堅牢で流動性の高い市場を牽引している。 ビットゴー(BitGo)や Copperなどの大手カストディアンはプライムファイナンス事業に注力しており、多くの新しいクレジットファンドがアジア太平洋地域で立ち上げられ、いくつかのETF発行者は資産を配分して、利回りを生み出す方法を積極的に模索している。 ローンおよび担保管理のためのツールの改善により、これらレンディング企業の多くはリスクを軽減し、商品提供を拡大できた。その代表例が、レンディング・プラットフォームのトライデント・デジタル(Trident Digital)。同社は、取引所から資金を引き出すことなくトレーディング企業にレバレッジを提供するための商品を組成し、常に過剰担保の状態を維持しながら、トレーダーに資本効率のメリットを提供している。 より効率的なリスクベースのマージン機能から融資の使途の可視性まで、金融機関は、カウンターパーティリスクを軽減し、新しい相手との取引に対する信頼を高めるために、より幅広くツールを利用できるようになった。 暗号資産による資金調達の持続可能性と継続的な成長は、イノベーションとリスク管理のバランスにかかっている。透明性、安全性、効率性に優れたレンディング・サービスを提供するツール、そして慎重なリスク管理の実施は、堅牢で効率的な暗号資産レンディング市場の構築には不可欠だ。 |翻訳・編集:T.Minamoto|画像:Shutterstock|原文:After 2022’s Bust, Scars Are Healing In Crypto Lending
CoinDesk Japan 編集部