初夏のムードをたたえた「芒種」の花束【二十四節気とフローリスト】
古来から伝わる「二十四節気」は、春夏秋冬の季節を6つずつに分け、それぞれの期間に季節の変化を表す名前をつけたもの。気忙しい日々だからこそ、暦に合わせて咲く色とりどりの花から活力をチャージしたい。今回は爽やかな初夏のムードをたたえた花束を東京・西新宿の「ハナミドリ」に束ねてもらった 【写真】気の置けない友人への、とっておきのギフトにしたい花束
芒種 6月5日~6月20日
芒種の“芒”は“のぎ”とも読み、稲穂の先にある、針のような細い毛の部分のこと。田植えが行われ、全国の寺や神社などで豊作を祈る「御田植祭」が行われる時期だ。蛍が飛びはじめ、梅の実が青から黄色へと熟すのもこの季節。梅が熟するころに雨がよく降ることから 「梅雨」の語源のひとつにもなっているといわれ、雨空の日が徐々に増えてくる。梅仕事をしながら、雨に打たれる紫陽花を眺めてみるのはいかがだろうか。 暑い夏でも快活に咲く花を束ねたような力強さと、ブルーやオレンジ、ピンクのフレッシュなカラーが元気をくれる花束。山あじさいやクレマチス、ホタルブクロはまさに芒種が旬の花々。ひまわりは、ダージリンという紅茶色の品種を使用し、大人にも喜んでもらえる夏のブーケだ。
高層ビル群が立ち並ぶ西新宿からもう少し歩みを進めた場所にある「ハナミドリ」。住宅街の中に突如現れる、緑のゲートがある小さな家が目標だ。14年ほど前、たまたまここに物件を見つけ、店を構えたと話す店主の上田翠さん。 「店をはじめた頃は、大都会・新宿のイメージとは異なり、地元の方々の日々の営みが活発でした。西新宿4丁目は昔は花街で、その名残りがあったりするなど、街の雰囲気に惹かれましたね」 今は代替わりが進み、少しずつ街が変容していくことに一抹の寂しさを感じながらも、「この街が好きですね」と笑顔をこぼす。 ガラスの引き戸を開けると、花台に並ぶ花はもちろん、こじんまりとした店内にさまざまな植物があふれ、生き生きとした空気が漂う。 日々の暮らしの中に花を飾ってほしいと、上田さんの好きな季節の花を仕入れている。ブーケを撮影している時も「なんてかわいいの」と声がもれてしまうほど、花への愛にあふれている。気取りがないのに、豊かな気持ちにさせてくれる。定期的に通いたくなる花屋だ。 ハナミドリ 住所:東京都新宿区西新宿5-25-1 電話番号:03-6276-6769 営業時間:12:30~19:00 定休日:水・木曜日 営業時間、定休日はインスタグラムの最新の投稿から 参考文献:『花と短歌でめぐる 二十四節気 花のこよみ』株式会社KADOKAWA 『くらしのこよみ 七十二候の料理帖』平凡社 山下景子『二十四節気と七十二候の季節手帖』 成美堂出版 TEXT BY YURI TAKAHASHI