東京五輪 招致成功を米メディアはどう伝えたか?
マドリードの場合は、経済状態への懸念がやはり障害になったよう。 米AP通信は、「国全体で、27%も失業者がいる」と報じ、「ニューヨーク・タイムズ」紙は、開催都市が決定する直前、「若い世代(15~24歳)の失業率が50%も以上もある」と驚きを交えて伝え、それが、財政基盤を気にするIOC委員の大きな懸念となっていると匂わせている。 ふたを開けてみればその通りで、加えて、「USA TODAY」紙は、「ドーピングスキャンダルが影響した」とはっきり書いていた。長年に渡って陸上、サッカー、自転車競技においてスペインでは薬物違反が相次ぎ、イスタンブールも同じ問題を抱えていたことから、むしろ日本のクリーンさがそこで際立ったか。 さて、そうしたイスタンブール、マドリードの失点を踏まえた上で、「ニューヨーク・タイムズ」紙は、東京が選ばれたのは、来年2月に冬季オリンピックが行なわれるソチ、2016年に夏季オリンピックが行なわれるリオデジャネイロのおかげだという、詭弁(きべん)まがいのロジックも立てていた。 要約すると、「ブラジルでは、サッカーのワールドカップと五輪の開催に対する反対運動が起きている。加えて、会場の建設など、準備の遅れなどが表面化している。ソチでは、主催国のロシアが法律によって同性愛者弾圧に踏み切ったことで、一部でボイコットの動きが出ている」。 IOC としてはもう、この種の問題に煩わされることにうんざりなのだそうだ。インスタンブールやマドリッドにはその可能性があった。よって、消去法で日本が選ばれたのだろう、という論理は、少し残念ではあるが、的を射ていた。 もともと、IOCは保守的。しかし、ここ10年ほど変化を求めた。それがリスクを指摘されながらも、リオデジャネイロ、ソチを選んだ要素にもなったが、今となっては後悔している――という見方は、どのメディアにも書かれていることでもあった。 さて、そうして選ばれた日本ではあったが、本当に大丈夫か? と訝(いぶか)しがる声がないわけではない。 安倍首相は、福島の放射能、汚染水問題について、「私が安全を保証します。状況はコントロールされています」と最終プレゼンテーションで力強く言ったもの、それに対して例えば、「シカゴ・トリビューン」紙は、「安部首相は、ほとんど不可能な約束をした」と疑いの目を向けている。 汚染水漏れの状況が、手に負えないレベルにあること、福島県の漁業が中断していることなどは、彼らも十分に理解している。今後7年間、安倍首相の言葉が真実であったのかどうか、福島の放射能、汚染水問題を通して、世界中の目が注がれることになる。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)