前澤友作氏が勝訴しても「なりすまし」は止まらない…フェイスブックが詐欺広告排除に後ろ向きな根本原因
■ジャネット・ジャクソン氏の元夫もメタ社を訴えた 中東カタールの大富豪ウィサム・アル・マナ氏(49)は、20世紀最高のポップスターであった故マイケル・ジャクソンの妹で、シンガーのジャネット・ジャクソン氏の元夫としても知られる。 アル・マナ氏は、2020年にメタ社をアイルランドの首都ダブリンの裁判所で訴えた。2019年を通して同氏になりすました暗号資産の詐欺広告をFacebookに掲載されたからだ。 メタ社側は2023年12月に詐欺広告掲載の事実を認め、「偽広告でアル・マナ氏の評判に傷がつき、同氏に苦痛を与え、当惑させたことに対して謝罪する」との声明を発表した。 英フィナンシャル・タイムズ紙はこの裁判の意義について、「(著名人が)高額の裁判費用をいとわず数年にわたる裁判を戦うことは、一般的にテック大手に対する抑止力として働く」と分析した。 ■メタ社は約束を事実上反故にしている しかし、メタ社の謝罪や口約束があっても、詐欺は一向になくならないようだ。 2019年、英国の著名ファイナンシャル・プランナーのマーティン・ルイス氏がなりすまし投資広告で被害を受けたとしてメタ社を提訴した。この際には、メタ社が300万ポンド(約5億9113万円)を詐欺防止啓発団体に寄付し、さらに「詐欺広告を事前に排除できるツール」を開発すると約束していた。 だが、その後メタ社がどのようなツールを開発したのか、またどのように運用されているのか、詳細は明らかにされていない。その後も2023年に前澤友作氏の詐欺広告が大量出稿されており、詐欺被害は拡大する一方だ。メタ社の対応には疑問が残る。
■「テスラ社に騙された」と苦情が寄せられている 米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク氏も詐欺広告による被害者の一人だ。 米フォーブス誌の調査によると、FacebookやInstagram、さらにはXにもマスク氏を騙る暗号資産関連の投資詐欺広告が繰り返し掲載されていた。 金銭をだまし取られた人たちが連邦政府あてに「テスラ社に騙された」と苦情を寄せる事態になっているという。 たとえば、実在しない暗号資産の「テスラ・トークン」への投資を勧誘する広告が、マスク氏の写真とともに掲載されていたという。1200ドル(約19万円)分のビットコインを支払った人がその全額を失ったケースなど、騙された人は枚挙にいとまがない。 ■イーロン・マスク氏の場合は「自業自得」 ただ、イーロン・マスク氏の場合は、彼の普段からの振る舞いにも原因があるようだ。マスク氏自身も「ドージコイン」という暗号通貨を推薦しており、またマスク氏の詐欺広告は自身が経営する「X」にも掲載されていた。 要するにXの出稿基準を緩いままにしていたのはマスク氏の自業自得ではないか、というわけだ。 そのためか、マスク氏は前澤氏やルイス氏、アル・マナ氏のようにメタ社を訴えてはいない。 オーストラリア鉱業界の富豪であるアンドリュー・フォレスト氏も詐欺広告の被害者だ。 オーストラリアのABC放送によると、オーストラリアは世界有数の「SNS投資詐欺大国」だという。フォレスト氏を騙る詐欺広告によって、67万豪ドル(約7000万円)を失った女性もいる。 フォレスト氏は、2019年にメタ社に書簡を送付して改善を求めたが、詐欺広告はいまだに表示されるようだ。