前澤友作氏が勝訴しても「なりすまし」は止まらない…フェイスブックが詐欺広告排除に後ろ向きな根本原因
SNS上で著名人になりすまし、投資などを呼びかけるニセ広告が広がっている。この問題で、ZOZO創業者の前澤友作氏は、Facebookなどを提供するメタ社に対し、1円の損害賠償とニセ広告の差し止めを求めて提訴している。ジャーナリストの岩田太郎さんは「裁判では前澤氏の求める『1円の損害賠償』は認められるかもしれないが、メタ社の責任については否定されるかもしれない」という――。 【写真】前澤氏の主張が認められない可能性がある ■前澤友作氏はメタ社を訴えた 米テック大手メタ社のFacebookやInstagram、短文投稿サイトのX(旧Twitter)などで、セレブになりすましたSNS型投資詐欺が多発している。 衣料品通販大手ZOZO(ゾゾ)創業者の前澤友作氏(48)は5月、メタ社を相手取り訴訟を起こした。メタ社が前澤氏の氏名や肖像を無断で使用した広告の掲載を許可したとして、1円の損害賠償と掲載差し止めを求めている。 前澤氏はさらに、詐欺広告対策についての具体的な内容の提示、責任者への証人尋問、そしてプラットフォーム事業者の規制を含めた迅速な対応を求めている。 ■メタ社は「対策に多額の投資」と繰り返すが…… 実はメタ社を訴えているのは前澤氏だけではない。いま同社は世界中で詐欺広告に関する訴訟を受けている。 カタールの著名ビジネスマンや、オーストラリアの富豪実業家、英国のファイナンシャル・プランナーなどのほか、著名実業家イーロン・マスク氏も同社の被害者だ。 前澤氏のケースは「氷山の一角」である。 これだけ訴訟されているにもかかわらず、メタ社は「対策に多額の投資をしている」と繰り返すばかりで、一向に被害がなくならないのが現状だ。
■被害額は約277億9000万円にも上る 前澤友作氏になりすました広告がFacebookとInstagram上に大量掲載されるようになったのは2023年春ごろ。前澤氏自身が開設した通報窓口には、広告によって金銭をだまし取られた相談が、提訴の時点で96件も寄せられたという。 警察庁の調べによると、2023年の1年間におけるSNS型投資詐欺の被害額は、約277億9000万円にも上る。同年だけでも、SNS型投資詐欺の認知件数は1月の85件から12月には369件と急増している。 前澤氏は今回の訴訟の狙いについて、「損害賠償請求はあえて1円にしました。彼らの行為が違法なのか合法なのかまずははっきりさせたい」とXに投稿した。 ■「テイラー・スウィフト裁判」を踏まえたものか これは、米著名歌手テイラー・スウィフト氏(34)の裁判を想起させる。2013年に、元ラジオDJのデヴィッド・ミューラー氏にお尻を触られたとして、2年後の2015年にセクハラ裁判で提訴し、損害賠償として1ドル(約155円)の支払いを求めた裁判だ。 コロラド州デンバーの連邦地裁の陪審は2017年にスウィフト氏の主張を認め、裁判所は被告のミューラー氏に1ドルの支払いを命じた。この裁判の目的について、テイラー本人はお金のためではなく、世論喚起が目的であったと語っている。