バスジャック事件の少年も不登校だった 被害の女性、我が子に重ね
2000年5月、当時17歳の少年が高速バスを乗っ取り、3人を死傷させた西鉄バスジャック事件で重傷を負った山口由美子さん(75)が龍谷大学(京都市伏見区)で講演した。少年も、自分の子どもと同じく不登校を経験していたと知り、子どもの居場所を開き続けてきた経験を語った。 山口さんは、福岡市であるコンサートに行くため、友だちとバスに乗っていた。顔、頭、手など10カ所以上を牛刀で切られ、重傷を負った。友だちは亡くなった。 なぜ、少年が事件を起こすに至ったのか。考え続ける日々が始まった。 少年は中学でいじめに遭い、不登校になって高校を中退。家庭内暴力が悪化し、療養所に入院していた。 山口さんの子どもも不登校になったことがある。「中学になってまで甘えるの」と、親として受け入れられない気持ちがあったという。 そのときの子どもの姿と、包丁を振りかざす少年の姿が重なった。 「そうだったんだ。つらかったね」と話を聞いてくれる人の存在。「親じゃなくてもいい。うちの子にはいて、少年にはいなかったんじゃないか」 事件から1年後、不登校の親の会を立ち上げた。その後、民家を借りて子どもの居場所を開いた。06年からは少年刑務所で月1回、講話もする。いま、こう信じている。 「自分の本当の姿をありのまま受け入れてくれる人との出会いが再犯を防ぐ」 講演は14日にあり、龍谷大矯正・保護総合センターが主催した。(滝坪潤一)
朝日新聞社