スコットランド独立問題 沖縄に波及はあり得る? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
沖縄との共通点と違い
さて、このような動きを沖縄独立に絡めて論じる人もいます。結論からいうとそうはならないでしょう。そもそも本気で日本から独立しようと考える沖縄県人がごくわずかだからです。しかし教訓を得られないかというとそうでもありません。沖縄が主に米軍基地負担で強い不満を持っているのが事実だからです。スコットランドにおける原潜基地負担と通じるところがあります。「かつて別の国だった」という過去も共通しています。 沖縄は国土の0.6%で人口の1%。そこに米軍基地の74%(面積比)が集中しています。県民からすればどう考えてもいびつな構造で何とかしてほしいとの要求がかねがねあります。ここから一義的に「日本政府が米政府と交渉して改善してほしい」と願うも一向にその気配がなく「生活に直結する問題で県民に自己決定権が全くないのはおかしい」という声が起きているのです。 この自己決定権に関して年末の沖縄県知事選挙で新たな動きが見られます。米海兵隊普天間基地の辺野古移設反対を唱える翁長雄志那覇市長と容認の仲井眞弘多知事が激突する構図になったからです。これまでの知事選は自民党(今は政権与党の公明党を含む)が推薦する候補と非自民が押す基地反対系候補が主に戦ってきました。しかし翁長氏の経歴はバリバリの自民党。所属どうこうに関係なく沖縄の声を代表しようという戦法です。むろん「戦法」ですから背景にはいろいろあるでしょう。それでも中央を大慌てさせているという一点でスコットランドのそれと一脈通じるものがあります。 人口の1%を占めるに過ぎない沖縄の声は1%しか届きません。それは10%であったスコットランドにも似通います。しかしその割には背負わされている負担が大きすぎるという反発が共通します。沖縄には米軍基地が、スコットランドはエネルギー分配や核兵器問題。さらに国土面積の3割という武器もありました。 沖縄県に属する尖閣諸島の問題で中国が海洋での脅威になっているという事実を県民が知らないはずがなく、直近の県の意識調査で、県民の89%が中国に「良くない印象」「どちらかといえば良くない印象」を持っているとわかります。といって「だから74%に基地負担を黙って受け入れろ」というのは虫が良すぎやしないか。もっと努力できる余地があるはずというのは大方の意見でしょう。「1%」でなく「74%」をどうとらえるかを放っておくと、今はまだ誤差程度の沖縄独立論が急速に高まる可能性がゼロではありません。それこそ中国の思うつぼです。