ヤバすぎる経済危機に「気付かない」日本人…1人当たりGDPでわかる「衰退国家の惨状」
危機的状況に「気付いてない日本人」がまだ多い…
これに対して、日本では危機意識がない。本当は、日本の低下傾向を食い止めなければならないのだが、そのような声は上がらない。それどころか、図に示したような状況が進行していることに気付いていない人がほとんどだ。 多くの人は、物価が上昇しないことが日本経済衰退の現れだと捉えている。そして、ここ数年物価が上昇し始めたので、デフレからの脱却が可能になりつつあるとしている。つまり、その意味で日本経済が新たな段階に入ったというのだ。 しかし物価が上昇しても、人々の暮らしは貧しくなるばかりだ。しかもここ数年の物価の上昇は、日本経済の内在的な変化によって生じたことではなく、コロナ後に米国で生じたインフレが日本に持ち込まれたことによって起こっているにすぎない。 だから本当に問題にすべきは、1人当たりGDPに示される豊かさがどう変化しているかだ。図に示したように、世界の各国が目覚ましい成長を遂げているにもかかわらず、日本が成長しないというのが現状なのだ。 先般の総選挙においても、「日本を偉大に」と訴えた候補者は、私の知る限り、いなかった。少なくとも、それが総選挙の大きな争点にならなかったことは間違いない。 これまでの傾向を逆転させるためには、日本がいまどのような状態にあるのかを正しく知ることが必要だ。
執筆:野口 悠紀雄