衝撃の『全領域異常解決室』!信じていた世界がひっくり返る驚きと爽快感
神の視点が見せる人間のリアリティ
「もう人間は神に近い力を手に入れたよね」「ていうかもう私たちの能力を超えちゃってるかもしれないね」 神の自覚があった頃の小夢が興玉に語った言葉。文明が発展していくにつれ、さまざまな力を手に入れた人間。けれどその力を持て余し、神を裏切るようなことばかり繰り返している。 ヒルコにまつわる出来事でもっとも怪しいのは、ヒルコ事件でデータ分析を担当していた寿正(野間口徹)。彼は「力を手に入れた人間」として神を潰そうとしているのだろうか。もしくは、彼も神なのだろうか。小夢の正体である天宇受売命といえば、天岩戸の前で踊り、閉じこもっていた天照大神(アマテラスオオミカミ)を岩戸から出した存在として知られている。女神のイメージが強いが、たとえば寿が天照大神であることは考えられないだろうか? 寿がCEOを務める会社の名前は「テミスホールディングス」だが、これはギリシャ神話の法と掟の女神・テミスからとっているように思える。これは日本神話と敵対する存在として名付けられているのだろうか。 「全決」と合同捜査を命じられつつも謎の多い「全決」に対して不信感を抱いている荒波健吾(ユースケ・サンタマリア)と二宮のの子(成海璃子)。人間の中では数少ない、「全決」の面々が神だとわかっていて直接捜査依頼をしていた内閣官房国家安全担当審議官の直毘吉道(柿澤勇人)が、8話で「全決」に不信感を抱き、荒波らに「全決」の正体を明かす。「『全決』のメンバーは皆、自分は神だと信じています」。ここにきて突然、彼らの視点から見ると神が「カルト集団」へと引きずり降ろされてしまった。そういえば「直毘」も神の名前だが、彼は本当に人間なのだろうか。 現実離れした設定が次々明かされていくなかで、現代を生きる人間のおぞましさが際立って見えてくる。現実が迫ってくる。超現実を通じてリアルを見せてくる『全領域異常解決室』の落としどころは、どこになるのだろう? *レビュー後編は、最終回放送翌週に掲載予定です。 ●番組情報 『全領域異常解決室』(フジテレビ 毎週水曜よる10時~) 脚本_黒岩勉 演出_石川淳一、松山博昭、根本和政、都築淳一 プロデュース_成河広明、大野公紀 出演_藤原竜也、広瀬アリス、柿澤勇人、成海璃子、迫田孝也、ユースケ・サンタマリア、小日向文世 他 音楽_小西遼 オープニングテーマ_清水美依紗『TipTap』 エンディングテーマ_TOMOO『エンドレス』 FOD、Netflixにて全話配信中(有料) 釣木文恵/つるき・ふみえ >>ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆 まつもとりえこ >>イラストレーター。『朝日新聞telling,』『QJWeb』などでドラマ、バラエティなどテレビ番組のイラストレビューを執筆。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。 Edit_Yukiko Arai
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