NY市、固定資産税の未払い急増-納税インセンティブの低下が原因か
(ブルームバーグ): ニューヨーク市で固定資産税を納めなくなった市民が増えている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期から見られる傾向であり、歳入を増やす目的で1996年に導入された租税先取特権の競売制度が終了したことが原因と市当局はみている。
固定資産税の滞納額は過去最高レベルに達し、6月の会計年度末には3年前より30%余り急増し、8億8000万ドル(約1330億円)を超えると予想されている。市の一般財源債発行に関連する文書から明らかになった。市は税収の半分近くを固定資産税から得ており、税収の落ち込みにつながり得る。
市議会の財政委員会が3月4日開いた公聴会で、市の財政コミッショナー、プレストン・ニブラック氏は「心配すべきは金額だけではない」とし、「固定資産税を払わなくても、何の影響もない」と人々が認識していることが問題だと指摘。「それが続くことは許されない」と話した。
ニューヨークのオフィス市場が苦戦を続ける中、固定資産税の未払いが増加しているのは確かだ。市が1月に示した財政計画によると、マンハッタンのオフィススペース全体の空室率は昨年11月に22.5%と、記録的高水準となった。
先取特権は他の債権者に優先して債権の弁済を受ける権利。未納の固定資産税の先取特権を競売にかけるプログラムは2022年3月に期限切れとなったが、市議会はこれを再承認しなかった。このため、当局によると、滞納者には負債を支払うインセンティブがないという。
このプログラムでは、固定資産税の滞納が3年続いた場合、市当局は一戸建てとコンドミニアムの先取特権を競売に出すことが可能だった。他の種類の不動産については、1年後に売却することができた。
市当局は最も市場性の高い先取特権を有価証券にパッケージ化し、第三者の信託に割引価格で売却。信託はサービサー(債権回収業者)を通じて債権回収の責任を負い、手数料と利息の支払いを加える。投資家に返済された後、市当局は利払いや手数料から追加収入を得る権利があるというものだった。