悠木碧の声優力は“少年役”で活きる! 『逃げ上手の若君』風間玄蕃“二面性”の表現力
TVアニメ『逃げ上手の若君』の第五回「決着!犬追物、そして…」では新キャラクターの風間玄蕃が登場し、少年役を演じる悠木碧の声の振り幅に驚かされた。 【写真】狐のお面を手に持つ風間玄蕃 武芸に秀でており、驚異的な目の良さを持っている武将・小笠原貞宗との犬追物対決。リードを許してしまった北条時行は、貞宗の圧倒的な馬術によって追い詰められてしまう。だが、逃げて戦うことに楽しさを感じた時行は、諏訪頼重の「逃げながらの射撃を編み出すのだ」という言葉を受けて、後方からの前方射撃への対処方法である「押し捻り」をアレンジして、貞宗の喉元に矢を当てることに成功した。 騎馬戦という動きのあるシーンをアニメでは、3Dモデリングを駆使して臨場感のある対決シーンとなっていたのが印象的だった。3DCGのアニメを日本アニメっぽく作る技術は最近のアニメ制作でもよく使われているが、クオリティの高いCGモデルを作り上げるのはさすがCloverWorksと言ったところだろう。 さて、犬追物対決は意外にもあっさりと時行の勝利で終わったが、後半のパートでは玄蕃が初登場。玄蕃は仮面を被った少年であり、敵を欺く変装や工作に長けている盗人だ。Bパートの冒頭では、身につけた技を武士に無用の卑劣な技と非難された上に盗みの嫌疑をかけられ追放された父親のエピソードが描かれていたが、そんな父親の後を継いで盗みを働いている。「金以外信じるな」という父の言葉どおり、何よりもお金に目がなく、最初に時行と出会った際にも、貞宗に言わない口止め料として500万円を要求している。第五回ではそんな玄蕃を仲間である逃若党(ちょうじゃとう)に加入させ、貞宗の館から帝の綸旨を盗もうと試みるまでが描かれた。
「9割の汚さと1割のカッコ良さ」が表現された悠木碧の風間玄蕃
そんな玄蕃を演じているのが悠木碧だ。『魔法少女まどか☆マギカ』の鹿目まどか役をはじめ、『薬屋のひとりごと』の猫猫役、『七つの大罪』のディアンヌ役など、女性キャラクターを多く演じている印象があるが、実は少年役も巧みにこなす声優でもある。「誰も俺には逆らえない。敵に回せば地獄を見るからだ」と時行の背後から登場するシーンでは、一見すると悠木が演じているとは思えないドライでクールな声色だった。きっと前情報がなければ、エンドロールで名前を見るまで誰が演じていたのか分からなかっただろう。 声優として声を当てる際に、ともすればその人の個性が声に現れることも少なくないが、悠木の声はいつ聞いてもフラットな感覚で聞くことができる。悠木は玄蕃について「玄蕃の魅力は9割の汚さと1割のカッコ良さを絶妙なバランスでひとキャラに内包できているところだと思ったので、オーディションでは誰より汚く演じよう!と取り組みました」とコメントしていた。そうしたキャラクターに求められる要素も細かく取り入れて、人物を立体的に演じられるのが悠木のすごいところだ。 貞宗の館から帝の綸旨の盗みを試みた際に、時行の顔に化けた玄蕃が「疑わずに俺を使える自信はあるか? 百万人の武士に裏切られた若君様」と時行に顔を近づけるシーンでは、ドライな声色に艶っぽさが乗っていて、美しい絵になっていた。 今回、久しぶりのメインどころの少年役ということで、悠木の新たな一面を見る機会が増えていきそうだ。来週も悠木の演技巧者な一面が見られることだろう。
川崎龍也