【連載】会社員が自転車で南極点へ4 空の上「息苦しい程の後悔」
ユニオングレーシャー基地で試走200キロメートル
【連載】会社員自転車で南極点へ4 空の上「息苦しい程の後悔」THEPAGE大阪
ユニオングレーシャー基地滞在中は、自転車による試走も、200キロメートル程度行った。基地の人が利用する固く踏みしめられた雪面から、くるぶしが埋まるほどの雪が深く積もった場所まで、ユニオングレーシャー周辺は様々な地表があり、練習にはもってこいだった。修理が必要だった後輪の脱落についても解決をみた。どうやら、僕の後輪の取り付け方が誤っていたようだ。
銀歯が抜けた ドクターは笑顔で「よくあるんだよ」
しかし、一方で、別のメカニックトラブルも発生した。ペダルを踏み込むと、キイキイと謎の異音がするのだ。何故か理由はわからないが、寒さで自転車の駆動部が収縮しておかしくなっているのかも知れなかった。 寒さによる影響は、自分の身体にも表れ始めていた。なんと、銀歯が抜けたのだ。 それは、出発前に、ガイドのエリックと共に本番同様の宿泊・走行訓練を行っていたときだった。僕は、朝食を食べていたのだが、ガリッ、という音とともに、随分と固いものを噛む感覚があった。朝食は「サッポロ一番」。具も入っていないので、口の中にあるのは柔らかな麺だけのはずだ。 「なんだ?この違和感は?」恐る恐る、先ほど噛んだものを口から出してみると「歯」だった。ガイドのエリックは笑って「よくある、よくある」「俺もこの前、3本抜けたよ!」と言っていたが、こちらとすれば、笑う余裕はどこにもない。 僕は急いで、医務室に行き、ドクターに歯が抜けたんだと、訴えた。ドクターも笑顔で「よくあるんだよ」と言いながら、歯の代わりに、プラスチックのようなものを取り付けてくれた。
Yoshi準備するんだ 予定通りフライトする
「Yoshi!準備をするんだ、今日。予定通りフライトする」エリックから声がかかったのは、1月4日の早朝。飛ぶか飛ばないか……ギリギリまでわからないのが南極だ。一度、フライトするとわかれば、周囲は急にバタバタと忙しくなる。 僕も、急いで荷物をまとめて、ソリに詰め込んだ。ここから南極点の北緯にして1度手前までフライトするのだ。僕たちが利用するセスナ機は極地用にタイヤが取り外され、大きなスキーの板を代わりに履いていた。