「これほど広範囲で見つかるとは」 中国原産の「ガ」の幼虫大発生 越冬困難なはずが…河川敷の木に繭がいくつも 温暖化の影響か
大陸から風に乗ってやってきた? 長野県で大発生
長野県の松本地方などで今秋、中国原産のガ「シンジュキノカワガ」の幼虫が大発生している。これまで県内では大陸などから風に乗ってきたとみられる成虫は確認されているが、広範囲で多数の幼虫が見つかったことはないといい、専門家は「県内で成虫が越冬している可能性がある」として注視している。 【閲覧注意】愛好家に人気の中国原産の「ガ」の幼虫
河川敷の木を調べると…
今月2日、安曇野市の犀川河川敷。環境省希少野生動植物種保存推進員でチョウやガに詳しい那須野雅好さん(64)=安曇野市=が、河川管理で切り倒されたニワウルシ(シンジュ)の幼木を確認すると、シンジュキノカワガの繭がいくつも付いていた。
鮮やかな羽、愛好家に人気 温暖化の影響か、国内各地で幼虫確認
シンジュキノカワガの成虫は大きさが4センチ前後。羽が鮮やかで、ガの愛好家の間で人気が高い。日本での越冬は困難とみられていたが、近年は温暖化の影響からか国内各地で幼虫の発生が確認されている。
市街地の公園や中山間地にも
那須野さんが主宰する「三郷昆虫クラブ」の会員らは9月中旬、同市明科地区や松本市アルプス公園でシンジュキノカワガの幼虫を発見。調べたところ、松本市波田から安曇野市の各地、東筑摩郡生坂村にかけて広く発生していることが分かった。
「これほど広範囲で見つかるなんて…」
今月5日以降、長野市の犀川や裾花川沿い、東信、南信地方でも見つかり、全県に拡大している可能性も出てきた。那須野さんによると、成虫は2015年に松本市で4匹が確認されているが、これまで幼虫は見つかっていなかった。「これほど広範囲で多数の幼虫やさなぎが確認されたことは驚き。成虫の一時的な飛来によるものとは考えにくい」と那須野さん。来春の発生状況を見極める考えだ。
農作物への影響は…
シンジュキノカワガは飛翔(ひしょう)力に優れて広域に拡散するが、農作物には幼虫が付かないという。ヤママユガ(天蚕)の一種「シンジュサン」などはニワウルシの葉を餌とするが、量が豊富なため競合の影響はそれほどなさそうだ。
専門家「チョウやガ、温暖化の影響大きい」 相次ぐ海外昆虫の生息域拡大
長野県内では近年、気候変動や人為的な持ち込みにより、本来は海外に生息する昆虫の初確認や生息域の拡大、大発生が相次いでいる。那須野雅好さんは「温暖化、猛暑に伴って身近な生き物が様変わりしており、特にチョウやガは影響が大きい」と指摘。「身近な自然の変化に目を向ける必要がある」と訴えている。