阿部サダヲ、“思い出の歌舞伎町”で挑む新たな『ふくすけ』「過去に観た人は1回忘れて」
■初めて舞台で松尾スズキの演出を受けた黒木華の行動に「さすがです」
――サカエを演じる黒木さんとは初共演です。印象を教えてください。 阿部:面白いですね。楽しい人です。黒木さんは、舞台で松尾さんの演出を受けるのが初めてなんですよ。とにかく直球で受け取っていて「やるぞ!」という気合が入っているのか、この前も、稽古場で松尾さんが「そこはさる」と、そのまま去っていって欲しいと演出したつもりが、黒木さんはそこで“猿”をやろうとしたんです。というか、やり始めていたんです。 ――!! 「さる」が去るではなく、モンキーのほうに変換されたんですね(笑)。 阿部:松尾さんの舞台だから全部が面白く変換されちゃったんですかね。いや、やっぱり、面白くというより、ただまっすぐに受け取って、そのままやったという感じでしたね。さすが、良い俳優ってそうなんだなと。そこで疑問に思って、聞いちゃダメなんだと。黒木さんに限らず、みんなそうなんですけどね。「こうやって」と言うと、「なぜですか?」ではなく、すぐにやる。 ――阿部さんも理由は聞かないですか? 阿部:聞かないですね。すごくいいチームでできてる感じです。 ――フクスケを演じるのは岸井ゆきのさんです。別の現場で、岸井さん本人から聞いたそうですね。 阿部:そうなんです。「今度、『ふくすけ』で一緒ですよね」という話になって。でも岸井さんがフクスケをやるとは思ってなかったから、フクスケだと聞いてビックリしました。これは面白そうだなと。少年にも見えるし、すごく合ってる気がします。フクスケのかぶりものがあるんですけど、あれをつけて稽古をした岸井さんのフクスケがすごくかわいいんです。それも岸井さんである意味として加わったものだと思います。
■キョンキョンの映画も、初舞台も。思い出の歌舞伎町で挑む舞台
――さて、今回は副題に「歌舞伎町黙示録」と入っています。東京公演の会場も歌舞伎町のど真ん中に建つTHEATER MILANO‐Za。今期は宮藤さんの脚本ドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)の放送もあったり、何かと歌舞伎町が話題ですが、阿部さん自身の歌舞伎町初体験はいつですか? 阿部:中学生のころ、キョンキョン(小泉今日子)の『生徒諸君!』という映画を観に行きました。誰かが舞台あいさつがあると聞きつけて、仲間3人くらいと一緒に朝4時ごろから、当時あった映画館の外に並びました。でも僕たち含めて5人くらいしかいなくて。舞台あいさつは別の劇場だったんです。結局、先着何名様だかに配られたシャンプーをもらって帰りました。 ――朝4時の歌舞伎町というと、夜の街の空気も残っていそうです。 阿部:そうですね。でも怖い感じはなかったです。もっと大人になってからは、裏にあるバッティングセンターのほうまでグルグルしたり。あ、僕は初舞台も新宿なんです。シアタートップスで。あと今はもうなくなっちゃったコマ劇場の地下にあったシアターアプルとかですね。 ――ありましたね。懐かしいです。 阿部:そんな新宿で今またやれるというのは、なにか不思議だし、特別な感じがします。それをこのキャストと、この劇場で。過去に『ふくすけ』を観た人は1回忘れてください。初めて観る人はちょっと衝撃を受けると思いますけど。ただ今回は劇場に来るまでに、歌舞伎町の街を通って、お客さんの気持ちがアップできているのはいいかもしれません。ずっと忘れられない作品になる気がします。(取材・文:望月ふみ 撮影:上野留加) COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』は、7月9日よりTHEATER MILANO‐Zaにて上演。