時空と障害を超え、アートの可能性を追求する「みずのき美術館」: "他の人と違う"のは褒め言葉【アート×福祉で社会課題の解決を目指す】
国内外で評価を得る「みずのき」作品
「みずのき」と「みずのき美術館」は、共に社会福祉法人「松花苑」が母体。絵画教室は1964年、日本画家の西垣籌一(ちゅういち)さんを講師に招いて始まった。西垣さんは「芸術の良しあしに障害の有無は関係ない」と、他界する2000年まで熱心に指導を続けたという。 この教室で生まれた作品は80年代、国内の複数の公募展に入選。1994年にはスイス・ローザンヌにある「アール・ブリュット・コレクション」に、6人の作家による32点が永久所蔵された。これはアジアの作品としては初めてのこと。国内外での高い評価を受け、みずのきの絵画教室で生まれた作品を収蔵・展示する目的で、みずのき美術館が2012年に開館した。 みずのき美術館は、アール・ブリュット(生の芸術)を発信する美術館として紹介されることが多いが、奥山さんは「みずのきの所蔵作品を、ヨーロッパで広まったアール・ブリュットの流れだけで解釈することはできない」と言う。日本と海外、美術と福祉など、地域や領域が歩んで来た歴史や背景は異なるからだ。みずのき美術館としては、あえて「アール・ブリュット」や「障害者アート」と分類せずに、作品や取り組み自体の魅力が伝わるように、ジャンルを越えた人々と一緒に活動していきたいと語る。 今回、特別支援学級の児童と山本さん、所蔵作品とのコラボレーションを取材して、奥山さん自身も“正解のないアートの世界”で、既存の枠組みを越える挑戦をしていると感じた。キラキラと目を輝かせながら作品づくりに没頭する子どもたち、彼らの作品を愛おしそうに眺める奥山さんを見て、全ての作品が作家の属性と関係なく、自然に「アート」と呼ばれる日が来ることを願った。
みずのき美術館
・所在地:京都府亀岡市北町 18 ・開館日:金曜日・土曜日・日曜日・祝日 ・開館時間:午前10時~午後6時 ・入館料:一般 400円、高大生 200円、中学生以下無料 *展覧会「地球のおとしもの」は2024年3月10日に終了しました
【Profile】
川勝 美樹 ジャーナリスト。米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール修士課程修了。米系通信社にて経済記者、英系医療機器業界誌や米系住宅専門webマガジンの日本語版編集長などを経て、現在は建築・介護・福祉・アート分野を幅広く取材。「アートx福祉」をテーマにした東京藝術大学の履修証明プログラムDOOR7期生。