【データセンター株も生成AI祭り】さくらネットは年初来2倍超、冷却設備関連も上昇…シャープ堺工場は液晶から転換
■ 巨大ITも世界で建設ラッシュ そもそもデータセンターとは、サーバーやネットワーク機器を設置する場所の総称で、大量のデータを処理・保管する重要なインフラです。生成AI開発には膨大な文章や画像データの処理が必要で、エヌビディアの主力製品である画像処理半導体(GPU)のような複雑なデータの並列処理ができる最先端のAI半導体を搭載したデータセンターの建設が重要になっています。 通信分野の調査会社デローログループは、アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフトの4社はそれぞれ24年にデータセンターの設備投資を2桁成長させると予測しています。実際、米グーグルは5月下旬にもAI事業の成長を目的にフィンランドのデータセンター拡張に10億ユーロ(約1700億円)を追加で投じる計画を明らかにしました。 アマゾン・ドット・コムは今後15年でデータセンターに1500億ドル(約23兆円)近くを投じる計画だと米ブルームバーグが報じています。さらに米マイクロソフトと「ChatGPT」のオープンAIが事業規模最大1000億ドル(15兆円超)のデータセンター建設を計画していることも米紙で報道されています。 日本に向けても、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が23~27年の5年間で2兆2600億円をデータセンターなどAI基盤に投資するほか、マイクロソフトも今後2年間で約4400億円を投じると公表。米オラクルも4月に今後10年間で80億ドル以上の投資計画を発表しています。
■ 空冷から液冷へ、冷却の技術開発にも注目 膨大な電力を消費するデータセンターですが、その消費電力のうち3~5割程度がサーバーなどの機器が排出する熱を冷却する冷却設備が消費していると言われています。データセンターで重要な役割を果たす冷却機器メーカーも生成AIの追い風を受けています。 ニデックは4月15日にAI半導体を使うデータセンター向けの水冷機器を増産すると発表。タイでの生産ラインを増強し、従来の月産200台から6月までに2000台、将来的には3000台以上へ拡大すると明らかにしました。増産の発表翌日に、ニデック株は一時、前日終値比7%高の6790円と半年ぶりの高値をつけました。 データセンター向け空調の高砂熱学工業は昨年末から株価が9割上昇。ダイキン工業なども米国でデータセンター向け空調機器の販売を拡大させています。空冷ではなく液体冷却などの冷却システムの提供を強みとする米国のバーティブ・ホールディングスの株価も昨年末から約9割上昇しています。 これまではサーバーから出る熱を空気で冷却させるのが一般的でしたが、データ量の増加に伴うサーバーの高性能化で発熱量が増える中、より効率的に電力を使う冷却方法の構築が急務となっています。 NTTデータやKDDIなどはサーバーを液体の中に浸して冷却する液浸冷却システムの構築を進めています。データセンターの新設を巡っては、電力網に過度な負担をかける懸念などから規制する国も出てきており、データセンターでの省エネ技術の開発動向にも注目されます。 【主な参考資料】 ◎アジア最大規模のAIデータセンター構築に向けた協議開始に合意(KDDI) ◎シャープ堺工場を活用した大規模なAIデータセンターの構築について(ソフトバンク) ■エヌビディア株だけじゃない“生成AI祭り” (1)【電力株に生成AIのインパクト】北海道電力は年初来2倍超、九州電力7割高…電力需要拡大や半導体工場建設が追い風に (2)【データセンター株も生成AI祭り】さくらネットは年初来2倍超、冷却設備関連も上昇…シャープ堺工場は液晶から転換
河端 里咲