この書類は何のため?【年末調整】の提出書類の見方・記載方法を解説!
今年も年末調整を行う時期になってきました。勤務先に提出する年末調整の書類をみて、 「これはなんのための書類?」「どうやって書くんだっけ」と考え込んでしまう人のために、それぞれの申告書の意味と記入方法を簡潔にお伝えします。 ◆【写真で見る】年末調整で提出する主な3つの書類 何のための書類なのかがわかると、年末調整の“面倒くさい”が少しなくなるかもしれませんね。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
年末調整はなぜ必要?
年末調整とは、会社が従業員に支払った給料からあらかじめ差し引いておいた税額と、その人の状況や特定の支出に配慮して所得控除を行った本来の税額を、1年間の総支払額が確定する年末に再計算して一致させる精算手続きのことです。 不足があれば、追加で所得税が徴収され、払い過ぎていれば、所得税が還付されます。多くは所得控除によって還付されるでしょう。 そして、個人の事情を把握して所得控除を行うための書類が年末調整で提出する書類です。そのため還付を受けたければ、正しくもれなく記入することが大事です。 ●今年の年末調整の変更点 令和6年分の年末調整は、今年から始まった「定額減税」により、申告書に新たな記載欄が設けられています。 定額減税については会社の担当者が計算を行うため、従業員は生計を一にしている配偶者や扶養親族をしっかり申告すれば、やるべきことは従来と変わりません。
年末調整の3つの書類
年末調整で提出する主な書類は次の3つです。 1.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 2.給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(令和6年版は「令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」) 3.給与所得者の保険料控除申告書 この他に、2年目以降に住宅ローン控除を受ける場合は「住宅借入金等特別控除申告書」が必要となりますが、ここでは説明を割愛します。 それぞれ詳しくみていきましょう。 ●給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 この書類は、「扶養控除」、「障害者控除」、「寡婦控除」、「ひとり親控除」、「勤労学生控除」を受けるためのものです。 *1の欄には、氏名、住所などを記入します。 個人番号は会社によって記載が必要な場合と不要の場合があります。 *2の欄には、控除の対象となる配偶者と扶養親族を記入します。 ここに記載する配偶者は、申告者(合計所得金額900万円以下の者に限る)と生計を一にする、合計所得金額が95万円以下の配偶者です。 扶養親族は申告者と生計を一にする16歳以上の親族で、合計所得金額が48万円以下の者です。 *3の欄には、障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生を記入します。 *4の欄には、住民税に関する事項を記入します。 16歳未満の扶養親族は、所得税の控除の対象とはなりませんが、住民税の計算においては対象となるため、ここに記載します。 ●給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 この書類は、「基礎控除」、「配偶者控除」、「配偶者特別控除」、「所得金額調整控除」を受けるためのものです。 *1の欄には、氏名、住所などを記入します。 *2の欄は、基礎控除の申告書です。 合計所得金額の見積額を記載することで、基礎控除の額と定額減税の対象かどうかがわかります。 *3の欄は、配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書です。 配偶者の合計所得金額の見積額を記載して判定を行い、配偶者控除または配偶者特別控除の額を出します。また、配偶者が定額減税の対象であるかどうかもここで判定します。 *4の欄は、所得金額調整控除の申告書です。 本年度の給与収入が850万円以下の場合は記入不要です。 給与収入が850万円を超える人で以下の要件に当てはまる場合に所得金額調整控除が受けられます。 ・23歳未満の扶養親族がいる ・申告者本人が特別障害者である ・申告者の扶養親族や同一生計配偶者が特別障害者である 令和6年は定額減税により申告書の名称が「令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」となっています。 ●給与所得者の保険料控除申告書 この書類は、「生命保険料控除」、「地震保険料控除」、「社会保険料控除(申告分)」、「小規模企業共済等掛金控除(申告分)」を受けるためのものです。 *1の欄には、氏名、住所などを記入します。 *2の欄には、生命保険料控除額を記入します。 一般の生命保険料(新契約・旧契約)、介護医療保険料、個人年金保険料(新契約・旧契約)を支払った場合に、その払込保険料の額に応じた一定の額の控除を受けることができます。 ・旧契約(2011年12月31日以前締結)は最高5万円の控除 ・新契約(2012年1月1日以後締結)は最高4万円の控除 ・新契約と旧契約両方で計算した場合は最高4万円の控除 新契約の場合、一般の生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料の控除額はそれぞれ最高4万円となり、生命保険料控除額の合計は最高12万円となります。 一つの保険契約で、年間の払込金額が控除額の上限を超えている場合、それ以上控除されることはないので、他に保険契約があっても記入する必要はありません。 *3 の欄には、地震保険料控除額などを記入します。 地震保険料の控除額は最高5万円です。5万円以下の場合は払込保険料全額が控除されます。地震保険料は通常、火災保険料と合わせて支払いますが、火災保険料部分は控除の対象とはならないので注意しましょう。 社会保険料控除は、毎月の給料から差し引かれていない社会保険料(生計を一にする親族の国民健康保険料や国民年金保険料など)を申告者が直接支払った場合に、その全額が控除されます。 小規模企業共済等掛金控除は、給与から差し引かれていない小規模企業共済などの掛金の全額が控除されます。iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金などがこれに該当します。 これらの保険料控除を受けるには生命保険会社や損害保険会社、国民年金基金連合会などが発行した控除証明書の提出が必要です。 各控除証明書は毎年秋頃に郵送で送られてくるので、きちんと保管しておきましょう。最近は電子化が進み、控除証明書の電子データでの提出が可能となっています。 電子データでの提出には、勤務先の給与システムが年末調整申告書データの取込みに対応している必要がありますので、事前に確認しておきましょう。