音楽でひとときの旅気分を。頭に情景が浮かぶような一曲『ペルシャの市場にて』／クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ケテルビー『ペルシャの市場にて』―大衆音楽に活路を見出したケテルビーの慧眼とは
今日11月26日は、英国の作曲家アルバート・ケテルビー（1875～1959）の命日です。 1875年バーミンガム生まれのケテルビーは、無声映画が華やかだった時代の英国で活躍した人気作曲家です。16歳で教会オルガニストを務め、20代には、軽音楽の編曲と指揮に才能を発揮。30歳を過ぎてから本格的なクラシック作品に取り組みますが、その本質は軽音楽にありました。放送局やレコード会社を生かしてヒットを生み出す姿は、まさに現代の作曲家の雛形といえそうです。 親しみやすい音楽を数多く残したケテルビーの代表作『ペルシャの市場にて』の舞台は、現在のイラン・イスラム共和国です。まだペルシャと呼ばれていたこの国の首都テヘランの市場の賑わいと喧騒が、東洋風のリズムと親しみやすいメロディによって描かれます。 「ラクダに乗った隊商」や「麗しいペルシャの王女」、さらには「蛇使い」や「回教徒の行列」などが目に浮かぶようなこの作品は、まさに標題音楽の傑作と言えるでしょう。
田中 泰／Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
家庭画報.com
