日本軍の「知る人ぞ知る教本」が”まさか復刊”で話題騒然、”最前線の空中勤務者”が「死を恐れない」ために学ぶ「壮絶な心構え」の中身…!
来年2025年は太平洋戦争終結から80年の節目だが、真珠湾奇襲攻撃が行われた1941年12月8日の日付で、航空兵の空中勤務者向けに、ある重要な小冊子が作成されていたことはほとんど知られていない。「空中勤務者の嗜(たしなみ)」(陸軍航空総監部)である。わずか22ページ、約3500字と短いが、開戦にあたり、最前線に立つ空中勤務者に対して死を恐れない精神教育を施すためのものだ。このほど話題のベストセラー「日本軍教本シリーズ」の第6弾「空中勤務者の嗜」(光人社NF文庫)として刊行され、高須クリニックの高須克弥氏も「大事なことが書いてある」と推薦文を寄せるほどにさっそく話題になっている。操縦士の心構えを説いた「空中勤務者の嗜」のほか、同じく収録された1944年9月刊行の基礎的マニュアル「空中戦闘教程」から一部抜粋・再構成してお届けする。 【写真】軍事誌発「伝説の航空機本」、そのすごい中身を公開する…!
不確実または誇大な報告は士道に反する(「空中勤務者の嗜」)
飛行機は空中勤務者の唯一絶対の兵器である。不注意のため飛行機を破損してはいけない。なかんずく地上事故は恥辱の甚だしいものと心得なければならない。 地図には軍機漏洩の恐れがある事項を記入してはいけない。秘密書類の携行は努めて避けよ。書類地図は飛行中飛散しないよう処置しなければならない。 抜け駆けの功名に走り、あるいは己の便のみを考えて累を他に及ぼすことなかれ。不確実または誇大な報告は士道に反するのみならず、爾後の運用を誤らせる。
後方を顧みてその後前方を攻撃せよ(「空中戦闘教程」)
同一行動をとる友軍機数の増加は当然警戒力の増大につながるはずであるが、かえってこれが低下する現象をきたすことがある。これは一に他の監視眼に依頼するためで、空中監視眼の増大に比例して索敵警戒能力は必ずしも増加しない。この空中の特性を理解すべし。 敵を発見した場合、最も危険なのは突進中である。「後方を顧みてその後前方を攻撃せよ」とは単座機の戦闘上不滅の鉄則である。 高高度は敵機の攻撃を受ける恐れは少ない。しかし過度に高空を行動するときは気圧の減少、酸素の欠乏および寒気などのためかえって索敵能力を低下することがある。状況により超低空行動もまた敵の攻撃を免れ得る場合が少なくない。
大型機への奇襲は、複雑な地形で下方からの接敵が有利(「空中戦闘教程」)
田畑、森林、山岳、河、水面は飛行機の色彩と相関連して発見に難易を生じる。また背景の状態は季節、太陽の位置、光線の強弱により変化する。 背景の色彩が複雑な場合には一般に発見困難で、色彩が単調な場合は飛行機の塗色と近似した場合のほかは発見が容易である。海面は静穏なときは発見容易であるが、波浪があるときは発見が困難である。 雪に蔽われた背景は白色以外の機影の発見は容易にするが、残雪がまだらに点在するときは反対に利用する価値が多い。 地形が複雑なときは、大型機などに対し奇襲のため下方より接敵することを有利とすることが少なくない。
潮書房光人新社