「京急蒲タコハイ駅」看板撤去騒動、悪いのはどう見ても「京急」「サントリー」側だ! その理由を冷静に分析する
変化する蒲田のイメージ
実は、大田区は子育て世帯の定住を重要施策に掲げ、蒲田の魅力向上に力を注いでいる。再開発によるマンションの建設や、子育て支援の充実など、着実な歩みを進めてきた。しかし、今回の企画は、そうした蒲田の新しい姿とは裏腹に、依然として 「飲み屋街というイメージ」 を前面に押し出している。まちの未来を見据えた施策と、目先の話題作りに終始する京急の姿勢には、大きなギャップがあるように感じられてならない。 21世紀に入り、蒲田はJRと京急の2路線の利便性を生かし、ファミリー層の流入が期待されるようになった。京急蒲田駅西口の再開発とマンション建設は、その象徴といえるだろう。 そうした地域の変化を受けて、大田区の子育て世代に対する支援は手厚い。例えば、2024年の予算案ではゼロ歳の第1子がいる家庭を生後半年から毎月訪問する事業に2億119万円を計上し、新たに3歳未満の多胎児家庭が乳幼児健診などに行く際のタクシー料金助成も導入した。 また、理由のいかんに関わらず2歳未満から15歳まで、所得に応じて定額な自己負担で利用できる宿泊型ショートステイなど手厚い施策を導入。子育て関連予算は、1261億円となり、予算全体の3割超を占めている。
治安問題が子育て阻害
では、再開発によってマンションなどが増え、蒲田が子育て世代にとって住みたい街になっているのかといえば、違う。 2022年の『大田区まち・ひと・しごと創生総合戦略』によれば 「大田区は年代別に見て、20~24歳の転入超過が大きい一方、0~4歳および30~39歳が大きく転出超過の状態にあり、子育て世帯の流出の傾向がうかがえます」 としている。大田区では交通利便性の高さから子育て世帯の転入を期待しているものの、未就学児とその親世代の社会減が続いている。 その要因としては、大田区が都内のほかの地域に比べて、交通利便性や住環境には優れているものの、 「子育て環境が劣っている」 ことが挙げられる。とりわけ、治安の問題は深刻だ。 警視庁の2022年の犯罪統計を見ると、蒲田警察署管内の治安の悪さは際立っている。自転車盗難の認知件数は23区内で新宿、渋谷署管内に次ぐワースト3位の1143件。侵入窃盗も区内最多の440件で、23区南部ではワースト1位だ。 さらに粗暴犯の発生率も高く、暴行の認知件数は518件と、大森、田園調布署管内を抑えて 「区内ワースト1位」 となっている。繁華街が隣接する蒲田の街は、犯罪の温床となっているのが実情だ。