「乾燥重量わずか540kgはやはり驚愕!」 モータージャーナリストの河村康彦がケータハム・セブン340Rほか5台の注目輸入車に試乗!
“ガイシャ”を楽しむのは、異文化を楽しむようなもの!
モータージャーナリストの河村康彦さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! アバルト500eツーリズモ・カブリオレ、アウディA8 60TFSI eクワトロ、ケータハム・セブン340R、シボレー・コルベット、ルノー・メガーヌR.S.ウルティムに乗った本音とは? 【写真25枚】モータージャーナリストの河村康彦さんがエンジン大試乗会で乗った5台の注目輸入車を写真で見る ◆異文化を身近に 多数の乗用車メーカーが存在する国に住みながら敢えてガイシャに食指を伸ばすわけ──30年以上もそんな生活を送ってきた自分の場合、やや大げさに表現すればそれは「海外旅行に出掛けずともそのクルマを手掛けた国の暮らしぶりの一端を味わえるから」と、そんな楽しみが大きいと感じる。ドイツの作品を所有した際には高い高速安定性に「アウトバーンでの150km /hが日常」という暮らしを感じられたし、フランスのポピュラーカー所有の際には「安価なベーシック・カーなのに長時間でも疲労知らずのシートに驚愕」の体験が印象深い。イギリスのコンパクトなスポーツカーではタイトなワインディングでの軽やかな動きに、彼の地の細いB級ロードを駆け抜ける際の身のこなしが重なって味わえた。“ガイシャ”に乗ることはことほどさように異文化を身近なものに感じさせてくれる、「元気の源」そのものなのだ! ◆アバルト500eツーリズモ・カブリオレ「ガイシャのなかのガイシャ」 大駐車場に並べられた36台の中にあっても、ひと際大きなアイドリング音を奏でていたのがアバルト500e。そう、“なり”が小さい事に加えてピュアEVと来ているのに、ある意味「もっとも偉そう」に佇んでいたのがこのモデルだったのだ。けれどもそんな佇まいは決して期待を裏切らない。アクセルを踏み込んでみれば弾けるようにスタートし、そのまま会場に特設されたスラロームコースに飛び込んでみれば、水すましのようにパイロンをすり抜けてくれる。EV航続距離はカタログ値で300kmほどだから、実用上の “安全距離”では寒い時期などきっと200km強に過ぎないはず。となればこのモデルを“飼育”出来るのはセカンドカー、サードカーとしてとなるのだろうが、それでもその走行中は何物にも代えがたい楽しさを味わわせてくれることは保証付きだ。何となれば、殆ど乗らずにガレージに置いて眺めるだけという使い方だって元気百倍!にさせてくれそう。ガイシャの中のガイシャと賛辞を贈りたくなる1台。 ◆アウディA8 60TFSI eクワトロ「二面性が魅力」 日本では2018年秋に発売された現行A8シリーズの中で、昨年追加されたプラグイン・バージョンが『60TFSIeクワトロ』。既存モデルに与えられた数字が“55”だったのに対しこちらは“60”であることがパフォーマンスで上位に立つことを示唆するが、ターボ付き3リッターV6エンジンと100kWモーターのコンビネーションで生み出されるシステム・トータルでの出力/トルクが340kW≒462ps/700Nmと、それが340ps/500Nmの純エンジン・モデルをまずはスペック上で圧倒する。実際乗り込んでアクセルペダルを深く踏み込めば、0→100km /h加速タイムが4秒台という一級スポーツカーばりの際立つ加速力にビックリ。一方で、穏やかなアクセルワークではエンジンに火が入ることなく50kmほどをピュアEVとして走り切るのだから、見た目からは判断出来ないそんな二面性がこのフラッグシップ・サルーンならではの見せ場でもある。乗る人のライフスタイル次第ではこれ以上にマッチングに優れたモデルはなかなかなさそうだ。 ◆ケータハム・セブン340R「軽さこそ正義」 1957年生まれのロータス・セブンが名称改めケーターハム・セブンとして生き続ける現在も、そこに宿る「軽さこそ正義」の精神はもちろん変わらず。発売されたばかりの“最新モデル”セブン340Rは、日本で販売されるもう1つのバリエーションである軽規格のセブン170が達成する440kgというデータにはさすがに負けるものの、それでも今や1トンを超える軽自動車も珍しくない中にあって乾燥重量わずかに540kgというのはやはり驚愕ものだ。コンパクトさはもとよりパワー・ステアリング、ブレーキ・ブースターやエアコンも無し、パワーウインドウどころかドアだって無し……といった“ないないづくし”による成果の賜物であるのは確かなれど、それゆえにドライビングの原点というものを味わわせてくれるのがこのモデルで最大の見どころ。“重ステ”だしブレーキもきちんと踏まないと効かずに焦るけれど、ドライビングと真剣に向き合う楽しさはまた格別!ナンバー取得前ゆえ広い駐車場内でスラロームに勤しんでいたら目が廻っちゃった! ◆シボレー・コルベット「想定外の元気の源」 「FRでなければコルベットに非ず」という声もあるかも知れないけれど、実態は満を持してミッドシップ化を敢行というのが現行C8型コルベットの真の姿。実際、乗ればフットワークのテイストにもハンドリング感覚にも手慣れた仕上がりが認められる。クルージング・シーンでの乗り味はランフラット・タイヤを履くのが信じられないほど滑らか、フラットで、コーナー・ターンイン時の振る舞いもミッドシップの教科書通りの軽やかさを演じながら、このレイアウトを初めて手掛けたゆえの危うさ、不安定さなどは微塵もないのだ。スペック上は“旧態依然”と言われかねないOHVのバルブ・トレインを備えた上に6.2リッターという今や規格外と言える大キャパシティとなれば、そこに「軽やかでシャープな吹け上がり」など期待する人も居なさそう。が、そこでよもやの肩透かしを提供してくれるのが、こちらも望外のスムーズな変速を成し遂げてくれる8段DCTと組み合わされたオーバー6000rpmまでピュンピュン回る伝統のV8エンジン。これこそアメリカ発、想定外の “元気の源” だ! ◆ルノー・メガーヌR.S.ウルティム「元気の源!」 ルノーのモータースポーツ活動を担うブランドがアルピーヌに一本化されたことで、「これがルノースポールを名乗る最後のモデルか……」とちょっと感慨深げに走り始めたメガーヌR.S.の最終進化型“ウルティム”。その走りはタイト・コーナーを追い込んでもアンダーステア知らずのフロント・ヘビーなFFレイアウトの持ち主とは想像出来ないハンドリング感覚や、乾いたサウンドと共に得られるパンチに溢れた加速感などが、相変わらずなかなかに刺激的。そんな走りのテイストと太いシューズを履きこなすワイドなボディによるルックスが生粋のスポーツ・モデルであることを隠さない一方で、実はベース・モデル同様の高い実用性を備えるのもこのモデルならでは。それゆえ、何となれば「一家にこれ一台」でも十分に事足りるという“万能性”を考えれば、MT仕様もDCT仕様も同一の659万円というその価格すら大バーゲンに思えて来る。楽しく、実用性に富んでその上お買い得! これぞ“元気の源”を絵に描いたような存在ではないか!! 文=河村 康彦 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
【関連記事】
- モータージャーナリストの藤島知子がBMW 420iクーペとM440iカブリオレを乗り比べ! あふれ出るモテ系オーラ好きのあなたは、オープン派? それともクーペ派?
- 『007』の秘密兵器で、日本の子供も魅了したロータス・エスプリS1をACマインズがオートモビル・カウンシルに出品
- 極上のランボルギーニ・ミウラとエスパーダが登場 オートモビル・カウンシル2024のガンディーニ追悼展
- 史上、最も醜いアルファ 試乗会では「海に捨てろ!」との罵声も アルファ・ロメオと日産の合弁事業で誕生したアルナとはどんなクルマだったのか?
- 英米では受注を開始したEVはまだ? レンジローバーに一部改良が行われた2025年モデルが登場