ラストが超最高…プロレスに無知だからこそ楽しめる、その理由とは? Netflix『極悪女王』徹底考察&評価
Netflixで独占配信中のドラマ『極悪女王』が早くも話題を呼んでいる。女子プロレスブームを巻き起こした80年代、悪役レスラーとして名を馳せたダンプ松本をゆりやんレトリィバァが演じる。今回は、当時の熱狂を知らない人の心にまで熱い火をつけた理由を考察する。(文・望月悠木)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】試合シーンが”ガチ”すぎる…貴重な未公開写真はこちら。Netflixシリーズ 『極悪女王』劇中カット一覧
プロレスに興味がない人ほど熱狂する?
9月19日(木)から配信が開始されたNetflixシリーズ『極悪女王』。本作は企画・脚本・プロデュースに鈴木おさむ、総監督に白石和彌が務め、80年代にカリスマ的な人気を集めて女子プロレス界を牽引したヒールレスラー・ダンプ松本の半生をモチーフにしたヒューマンドラマだ。 配信初日から「今日のTOP10(シリーズ)」で連続1位を獲得しており、スタートダッシュに成功してはいるものの、当時のプロレス事情を知らないために視聴を躊躇している人は少なくないのではないか。筆者も当時の女子プロレス界の盛り上がりを知らなかったため、『極悪女王』の視聴前は楽しめるか不安だった。 しかし、当時を知らない人こそ、むしろプロレスに興味関心がない人こそ楽しめる部分が多い。なぜ『極悪女王』がプロレス事情に詳しくない人こそ楽しめるのかを記したい。 まず大前提として、クオリティの高さが挙げられる。映画『孤狼の血』シリーズ(2018~)をはじめ、バイオレンスな作品をこれまで多く手がけている白石が監督だからこそ、本作の肝である流血試合がとても凄惨に描かれている。女子レスラーが必死でリング上で戦っている姿が映し出されていたが、流血がしっかり表現されていたことより、より一層“ガチさ”が伝わった。 また、合間合間でクスッと笑いどころがある鈴木の脚本も面白い。重苦しい空気が長く流れる作品だけに、笑えるシーンが散りばめられているおかげで、適度に肩の力を抜いて視聴できた。
ゆりやんの声がすごい! 松本香とダンプ松本の対比
なによりダンプ松本役を務めたゆりやんレトリィバァがすさまじかった。破壊力のあるタックルを見せ、凶器を使って長与千種(唐田えりか)を流血させるなど、リング上での狂気を帯びた姿はヒールレスラーそのもの。ただ、圧倒されたのはリング上だけではない。リング外での松本香としての演技にも目が釘づけになった。 全5話の本作ではあるが、3話のラストで松本香はダンプ松本に変貌を遂げる。輝かしいスター性を放ったベビーフェイス・ジャッキー佐藤(鴨志田媛夢)に憧れてプロレスの門を叩いたものの、自身にはそれが無いことを自覚しながらも必死に抗う。それでも、ヒールになるしかプロレス界で生き残れないことを悟り、ダンプ松本として生きていくことを覚悟する。ゆりやんはその心情の揺れ動きを3話の中で丁寧に演じていた。 また、ゆりやんの声の使い分けには驚愕の一言。松本香時代は甲高く舌足らずで、夢見る少女のような可愛らしい声だった。しかし、ダンプ松本になると声のトーンが一気に変わる。かなり低く、一音一音に重みのあるドスの効いた声になっており、もう松本香はそこにいないのだと嫌でも気付かされた。表情だけではなく声でも松本の覚悟を表現できたのは、ゆりやんの器用さがあったからこそだろう。