ラストが超最高…プロレスに無知だからこそ楽しめる、その理由とは? Netflix『極悪女王』徹底考察&評価
松本対長与の髪デス切りマッチの衝撃
改めてプロレス事情に精通していないからこそ楽しめる理由を掘り下げていく。何と言っても、当時を知らないからこそ次の展開がわからないため、「この選手は今後どうなるのか?」「この試合の行方は?」といったことを純粋にワクワクできる。“無知”はネガティブに捉えられがちではあるが、無知だからこそ『極悪女王』の目まぐるしく、激しい展開はスリリングに映った。 中でも、5話の松本対長与の敗者髪切りデスマッチは顕著だ。両者が大量出血しながらも一向に試合は終わらない。頭から血がドバドバ流れている長与に、松本は容赦なく凶器攻撃を繰り返す。ハサミを額に突き刺す時の「ベチャ」という生々しい効果音も恐怖心を煽り、「早く試合を終わらせてほしい」と祈るような気持ちになったが、それと同時に「どっちが勝つのか?」という期待感も膨れ上がった。 もちろん結末を事前に知っていても楽しめたとは思うが、それでも無知で良かったと思うシーンの1つである。
「プロレス=やらせ」の固定観念を覆すリアルな描写
プロレスという競技の楽しみ方を知れることも魅力だ。「プロレス=やらせ」というイメージは根強い。作中でも“ブック(筋書き)”について触れられており、試合会場の控室にはその日の勝敗を記したカード表が置かれていた。 確かにプロレスにブックはあるのかもしれない。試合の勝敗は事前に決められているのかもしれない。それでも本作に登場する女子レスラーは全員本気だ。看板選手ばかりが優遇される現状に嫉妬心を抱いたり、自分自身のプロレスのスタイルと向き合ったりなど、松本以外の登場人物の葛藤にもスポットライトが当たっている。 リング上でもリング外でも本気でプロレスと向き合っている姿が描かれており、視聴中に「プロレス=やらせ」という考えが脳裏を過ぎることは一切ない。プロレスに対するマイナスイメージを改め、またプロレスに興味を持つキッカケを与えてもくれるだろう。
男性社会に立ち向かう女子レスラーたち
『極悪女王』は男性社会に立ち向かうシスターフッド的な要素もあり、とにかくカッコ良い女性が描かれたドラマと言って良い。松本達が所属する全日本女子プロレスは松永兄弟によって経営されており、所属レスラーは全員女性ではあるものの支配権は男性のみが握っている。 そのため、興行を盛り上げるため、女子レスラーが駒のように扱われるシーンが少なくない。そういった態度に女子レスラーは、唇をかみしめながらも従順でいることを強いられる。だからこそ、5話ラストのダンプ松本の引退試合で、松本や長与らが“共闘”して松永兄弟達を蹴散らし、自分達がやりたいプロレスを実現する展開はカッコ良すぎた。 プロレスを通して、自分らしくあるために仲間と一緒に壁に挑む姿に胸を熱くさせられる。プロレスが好きかどうかは関係なく、ラストは誰もがカタルシスを味わうことができるだろう。 【著者プロフィール:望月悠木】 フリーライター。主に政治経済、社会問題、サブカルチャーに関する記事の執筆を手がけています。今知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けています。(旧Twitter):@mochizukiyuuki
望月悠木