パリオリンピック卓球女子団体 押しつぶれされそうだった張本美和はいかにして「壁」を乗り越えたか
「(コートサイドで涙が出てきたのは)メダルが獲れてうれしい、というより、第4試合に勝ててホッとしました。(途中まで)リードされた状況だったので、"自分が負けて、チームに迷惑かけてしまうんじゃないか"っていうのが大きくて......。本当に、切り替えられないくらい落ち込んでいたので、第4試合に勝ててよかったなって」 戦いにかける気持ちが、チーム全体で強いのだろう。 平野はこの日、獅子奮迅のプレーだった。張本は、その平野に支えられながら、結果を叩き出した。一方、早田はケガに正面から向き合っている。首脳陣がそのストイックさに「頭が下がる」と脱帽するほどで、チーム全体を勇気づけた。それぞれが仕事を果たしている。 この夜、早田はミックスゾーンでの取材を受けていない。試合後、すぐに深夜の治療に向かった。準々決勝後、本人が「治療を優先させてもらうのは、勝つためなので」と、試合後の取材を受けられない可能性をやんわりと伝えていた。 「最初から目指すは金メダルなので、すべてはそのために」 早田はそう決意を語っていた。 8月10日、決勝戦。中国は果てしなく強いが、彼女たちは必勝を期してコートに立つ。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki