ロッキード事件の闇が晴れない日本政治の不幸(上)「総理の犯罪」の衝撃
それが検察にP3C疑惑を追及させず、民間航空機トライスターの売り込みに関わる贈収賄容疑で田中を逮捕することになったと私は思ったが、一方でロッキード事件は日本だけがターゲットになった事件ではない。ロッキード社は世界十数か国に秘密代理人を置いて売り込み工作を行ったが、それらの国で秘密代理人も収賄政治家も逮捕された話を聞いたことがない。社会的非難は浴びても刑事訴追されてはいない。しかし日本だけは違った。 田中は無罪を主張し全面的に争う。無罪を勝ち取るために田中派を膨張させ、数の力で総理を裏から支配する政治構造を作り上げた。そのため大平内閣は「角影内閣」、鈴木内閣は「直角内閣」、中曽根内閣は「田中曽根内閣」と呼ばれるなど、日本政治は田中支配の時代を迎える。そのことが後の政治に大きな影響を与えることになるのである。(下に続く) ※「下」は8月15日に掲載予定です。
------------------------------- ■田中良紹(たなか・よしつぐ) ジャーナリスト。TBSでドキュメンタリー・ディレクターや放送記者を務め、ロッキード事件、日米摩擦、自民党などを取材する。1990年に米国の政治専門 チャンネルC-SPANの配給権を取得してTBSを退職、(株)シー・ネットを設立する。米国議会情報を基にテレビ番組を制作する一方、日本の国会に委員会審議の映像公開を提案、98年からCSで「国会テレビ」を放送する。現在は「田中塾」で政治の読み方を講義。またブログ「国会探検」や「フーテン老人世直し録」をヤフーに執筆中