《ブラジル》世界のカケハシ=日本から「先祖訪ねて三千里」=先祖サーチで移民の大伯父判明=世代を超えて親戚14人と対面
山口さんは感謝を述べるのは自分の方だとし、「今まで知らなかったブラジル日本移民について知るきっかけになった」とした上で、「当時の移民条件に唯一当てはまった今朝松一家が、家族を救う為にブラジル移民に名乗り上げ、日本に残った今野家を救ってくれたことに感謝しかない」と言葉を強めた。 誤解も解けた。今朝松さんらは日本語しか話せず、ポルトガル語中心のユウジさんら子どもたちと会話の壁があり、父の心情をきちんと理解できていなかった。ユウジさんは「父は日本軍に志願して太平洋戦争に参加できなかったことに負い目を感じていた」と思っていた。だが、山口さんは1942年に日伯が国交断絶して訪日することすらできなくなっていた時代背景などを説明すると、「父は負い目を感じる必要はなかった。誤解していた」と親戚たちは喜んだという。
まさかと驚くブラジル側一族=「先祖の縁の地を見たい!」
「騙されたかと思ったよ!」―山口さんと会う前の心境を、集まった親戚に聞いた第一声がそれで、皆がうなずき、その場が笑いの渦に包まれた。「ブラジルから日本に行って先祖を探すならわかるけど、逆だからね」とのこと。 5月26日、サンパウロ市にある当編集部に、宮城県に住む山口和宣さん(株式会社「世界のカケハシ」代表)の親戚にあたるサンパウロ州カンピーナスやペルイベ等に住む今野一族14人が集まった。 日本に2000年~06年まで滞在していた今野サマラさん(41歳)は、「今野家の先祖が北海道に住んでいたことは知っていて、実際に訪ねたらどんなに素敵だろうと思っていたが、伝手もなく断念した。まさかこんな形で日本の親戚に出会えると思っていなかった」と嬉しそうに語った。 最初は緊張を隠し切れない一同だったが、拍手で出会いを祝い、山口さんは一人ひとりに握手を交わし挨拶をした。山口さんは北海道銘菓「白い恋人」や今野家ゆかりの岩手県江刺の銘菓「岩谷堂羊羹」等をプレゼントした。また、山口さんの母静佳さんと伯父の正弘さんから預かった手紙を渡した。これらを受け取った今野家は自分らも手紙を渡したいと話し、距離を縮めた。 山口さんはパワーポイントにまとめた今野家の歴史を説明した。当時の戸籍謄本や、北海道や岩手の写真を紹介し、一同は真剣な様子で説明に聞き入っていた。 その後は歓談タイムとなり、互いの身の上話を通して充実した時間を過ごした。 今野ユウジさんは「私たちの知らなかった家族の歴史を話してくれた。今日という日を作ってくれた和宣さんに感謝をしています」と話した。 また、日本に娘がいるという今野マルシア・フミエさん(59歳)は「和宣さんは(制度上)取ることが出来ない母方の祖母の宮崎家の戸籍を、日本に居る娘を通じて取得して家系図を充実させたい」と意気込んだ。 さらに「普段、ブラジルにいても会っていなかった親戚にも会えた」「和宣さんのお陰でみんなと話すことができた。感謝したい」との声が挙がり、山口さんの来伯がブラジル内の親戚の結び付きも強めるきっかけになった。