「好きなことで、生きていく」が正解とは限らない。芸能界のトップランナーたちが教えてくれた「二番目にやりたい仕事がちょうどいい」
ある日、いつものように『中川家ラジオショー』(ニッポン放送)を聴いていたら、兄の剛さんが、こんなことを言い出したんです。 「二番目に好きな仕事が続く、一番だったら続かない」 中川家といえば、初代『M-1グランプリ』王者。お笑い界のスターです。しかし、そんな二人は、芸人は一番やりたかった仕事ではない、というのです。 兄の剛さんは、芸人になる前、建築士になりたくて建築関係の仕事に就いたものの、「なんか違う」と辞めたそう。さらに、弟の礼二さんは、車掌のものまねが有名で、無類の鉄道好き。実際鉄道関係が一番やりたい仕事で、芸人は二番目だったそう。 お笑いで天下を取ろうとは思っていなかったし、ただやることがなくてNSC(吉本の養成所)に入った感じ、だというのです。さらに、剛さんはいつでも(芸人を)辞めたい、喫茶店を開きたい、と言うなど、今でさえ芸人ファーストではない様子。
「ここでええか」くらい適当にやってる人の方が続く
二人曰く、「よし、やるぞ!」と意気込んでいた芸人や、はりきっている芸人はみんな辞めていったのだそう。芸人以外でも、めちゃくちゃやる気がある人は長続きしない。お金のためです! 家から近いんで! ぐらいのスタッフのほうが長続きする。 やる気満々の人は、思い描いていたイメージと現実のギャップで嫌になるのかもしれない。好き過ぎると、理想をめちゃくちゃ大きく描く。だから、その通りにいかなくてショックを受けて嫌になるのではないか。「ここでええか」くらい適当にやってる人の方が残っている、と分析。本当に好きなことは趣味にした方がいい、とも言っていました。 また、中川家は仕事が終わるとソッコー帰る、というのは有名な話なのですが、「終わった後、切り替えてパーンと帰る、それが大事。切り替えないとおかしくなる」のだそう。
前川清さんは「他にいい仕事がないかな」と思っていた
以前インタビューした芸能人でも、中川家と似たマインドの方がいらっしゃったんです。 一人目が、歌手の前川清さん。 歌手なんて、なりたい人はごまんといても、実際スターになれるのはほんの一握りの世界。スターになるのは、きっと歌手になりたくてなった人に違いない! そう思うじゃないですか。でも、前川さんにインタビューして、その考えがひっくり返されたんです。 「ほかに給料がいい仕事があったら、もうとっくに違う道を選んでいたでしょう」 「どんな仕事でもいいのですが、より一層お金をいただける仕事が、他にもっとあったんじゃないかなと思っているんです。歌をどうしても歌いたかったという自分はいなかったし、歌手に固執してないですから。でも、ある意味好きで入った歌手の道ではなく、食べていくため、生活のためだからこそ、一生懸命やってこれたのかもしれません」 ――「歌に浸らない、聞かせようと思わない」前川清の意外な発言から考える、自分がないからこそ得られるもの【インタビュー前編】(mi-mollet)「僕は『紅白でトリを務めたい』という野心はどうしても持てないんです。そういう歌い手として凛としたものがない。だいいち、アガッてしまって耐えきれません。歌番組でもステージに並ぶ時に真ん中に立たされることほど嫌なこともない。端っこの方が良いです(笑)。」 ――【オヤジンセイ】前川清<後編>「あえて借金を作り、そのために働く」前川流哲学を語る!(めざましmedia) いやぁ、本当にびっくりですよね。歌手デビューしてすぐに紅白に出場。歌手生活55年を迎えるような大スターが、ずっと他にいい仕事がないかな、と思っていたなんて。前川さんはラジオで、“もっと安定した仕事を、とずっと思っていたけれど、70歳になりもう無理だと気づいた”ともおっしゃっていたんです。 かなり意外ではありますが、でも、もしかしたら、「この道しかない」と思い詰めすぎない、「これがダメだったら違う道がある」と思っている方が、精神衛生的にもいいし、長く続けられるのかなとも思うんですよね。
ヒオカ