世界で活躍する研究者が行っていた「パフォーマンスを最高レベルに高める」習慣
優秀で仕事がデキる人は、他の人と一体どこが違うのでしょうか? 本稿では、書籍『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』より、脳科学者の中野信子さんが出会った"世界の頭のいい人"が、仕事で高いパフォーマンスを発揮するために実践していたことについて紹介します。 【図表】「ストレス」と「パフォーマンス」の関係(ヤーキーズ・ドッドソンの法則) ※本稿は、中野信子著『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)の一部を再編集したものです。
一緒に話しているだけでこっちまで賢くなった気になる
フランスの研究所時代の同僚のFさんは、若手の中ではかなりの注目を集めている研究者です。3ヶ月に一本という信じられないスピードで論文を発表し続け、31歳の若さで自分の研究室を持ったほどです。現在は、母国オランダでも屈指の研究施設で、准教授として活躍しています。 研究施設に入るにあたり、彼は5つもの研究所から「ポストを用意するから来てほしい」というオファーを受けました。どこか一つを選ばなければならないので、「断るって、本当に神経を使うよね......」なんていう贅沢な悩みまで口にしたほどです。こちらは研究所での任期のことで悩んでいたというのに! 私にも神経を使ってほしい......。 それはさておき、Fさんはパリ出身でもないのにパリのことをよく知っています。いろいろと面白いお店や、マイナーな美術館やギャラリーなんかに案内してくれたりもしました。映画や音楽にも、ものすごく詳しい人でした。好奇心が本当に旺盛なんです。 さらに重要なポイントとして挙げたいのが、Fさんには研究室のムードをポジティブにする雰囲気があったという点です。彼と話をしていると、何だか自分の頭まで明晰になったような感じがして、気分がとても晴れ晴れとしてきて、やる気が出るのです。 さて、このFさん、どうしてこんなにデキる奴なんでしょうか。研究が大好きだからでしょうか? そもそも、Fさんの頭のつくりが違うのでしょうか?
自分ができることとできないことを知ろう
確かにFさんは、頭のいい人です。でも、私たちがいたのはフランスでもトップレベルの研究所でしたから、Fさん以外にも頭のいい人はたくさんいたのです。というよりむしろ皆、その国を代表するような頭のいい人たちでした。その中でもFさんが際立っていたのは、一体なぜなのでしょう? Fさんが他の人と違っていたポイントは、自分の実力を客観的に評価できることでした。いわゆる優秀な人というのは、周囲からすぐに褒められます。それで自信過剰になったり、逆に「安心してはいけない」と思うあまりに焦って、ストイックになりすぎてしまいがちなのです。 そんな中でFさんは、自分の能力を、冷厳なまでに正確に把握していたのでした。オランダ人らしい合理主義の賜物ともいえるかもしれません。 「自分に何ができるのか」はさておき、「自分に何ができないのか」をきちんと見積もることは、意外に難しいもの。それは、皆さんにも経験があるのではないかなと思います。 Fさんの、自己に対するそうしたクリアなまなざしは、友人として見ていてもとても気持ちのいいものでした。同僚たちは皆、そう感じていたと思います。またそれが、Fさんの人柄の魅力でもあったのです。