新しい墓の形「樹木葬」なぜ注目集める? イメージ先行に危惧も
お盆の時期に入り、墓参りに帰省している人も多いでしょう。墓の形も墓事情も多様な昨今ですが、特に新しく注目されているのが「樹木葬」です。墓石の代わりに「木」を立てるのが基本的なイメージで、公営墓地でも取り入れられ始めています。一方で、まだ定義があいまいで誤解を生みやすいという指摘も。そのメリットと課題をまとめてみました。
「住みよい町」でも新たに導入
少子化の中で人口が増加し、「住みよい町」の上位に名の挙がる愛知県長久手市。今年度は新しい市営墓地を建設中で、9月末までに第一期工事を終える区画の一部に「樹木葬」を導入します。 正式には「合葬式墓地」と呼び、土中に1000人分の骨壷をまとめて埋葬、その上を土と芝で覆い、花や低木、そして一本のシンボルツリーを立てる計画です。 参拝時は一つの献花台で手を合わせ、土中のどこかに眠る故人の冥福を祈ります。遺族は1体につき15万円の使用料を最初に払えば、その後の管理費などは支払う必要がなく、墓地の手入れも市にお任せ。募集は12月ごろから開始する予定ですが、「すでに市内外から引き合いが十分にあります。新しい形なので、問い合わせがあればよく説明して納得していただくようにしています」と市の担当者はうれしい悲鳴を上げている状態です。
岩手の寺が「日本初」
樹木葬は「樹林葬」「森林葬」などとも言い、それを取り入れた墓地も「樹林墓地」「庭園墓地」「里山墓苑」「ガーデニング墓地」などさまざまな呼び方があります。 その起源は森林の多い北欧に古くからあり、アメリカや韓国でも見られますが、「日本初の樹木葬」を公言するのは岩手県一関市の知勝院という寺。1999(平成11)年に、当時は祥雲寺と呼ばれていた寺の住職が里山の一画を墓と見立てて埋葬を始めたそうです。墓石などの人工物は一切立てず、骨壷も使わずに1メートルほどの穴を掘って遺骨を直接埋め、里山の生態系に合わせた低い花木を植えるだけ。 知勝院の事務所は「毎年100体ほど増えて、現在は2300体ほどを埋葬しています。全国から見学や視察がありますが、われわれの一番の目的は里山を守ること。徹底的に『自然に還す』やり方はわれわれ以外にないのでは」とします。