新しい墓の形「樹木葬」なぜ注目集める? イメージ先行に危惧も
公営墓地にも広がる
確かに、こうした「里山型」の樹木葬は一般的とは言えないようです。むしろ注目されるのは長久手のような「都市型」あるいは「公園型」と呼ばれる形式。2005年に東京都町田市の民間霊園で桜の木をシンボルとした「桜葬」が始まり、2008年には横浜市の市営墓地「メモリアルグリーン」(現在は募集を終了)で、2012年に東京都営「小平霊園」で樹木葬形式の区画が設置され、注目を集めるようになりました。 葬儀や墓地に関する情報サイト「エンディングパーク」が掲載している樹木葬・樹林墓地は全国で50か所ほど。ただし「この1年ぐらいでもどんどん増えているはずなので、正確には把握しきれていない」(編集部)といいます。 その背景には「『死後は自然に還りたい』という人々の自然志向を満足させ、その多くが『継承者を必要としない』という、従来の継承制をとっていない点で現代の家族形態にぴったり合う。また、墓石がない分コストが安く、省スペースで景観もきれいだというメリットが多くある」からだというのは、「桜葬」を始めた認定NPO法人「エンディングセンター」理事長で、東洋大学教授の井上治代さんです。 井上さんによれば、自然志向の葬法でも「散骨」は墓をつくらず、「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」の範囲外で行っているのに対して、樹木葬は法律上、墓地として許可を受けた区域に遺骨を埋める形式です。そのため自治体も取り組みやすく、同時に土地不足を解消し、高齢化によって個人で墓が管理できず、墓地の「荒れ」が進んでしまう問題などを防げるメリットもあります。
定義あいまい「無認可」も
ところが、最近では散骨と樹木葬をごっちゃにして、木の周りに散骨することで「散骨樹木葬」などとうたう施設も出てきているそうです。きちんと管理するという樹木葬本来の意義を外れた「無認可」の方法です。 「現状ではさまざまな形やタイプがあり、選ぶ側がイメージ通りのものであるか、しっかりと確認が必要です。韓国のように樹木葬を自然葬として法的に規定する国もあり、日本でも公立の樹木葬が増える中で、最小限の定義が明確にされてもいい時期ではないかと思います」と井上さんは指摘します。 2年前に「いわゆる樹木葬型墓地」を調査した全日本墓園協会主任研究員の横田睦さんも、「イメージ先行」の現状を危惧します。 「墓石の横に木を立てただけでも樹木葬と呼んでいるのが実態で、雲をつかむような話。墓の管理面の問題など、樹木葬でなければ解決できないわけではありません。メディアは『新しい墓』が『ブームだ』ということにしたいのだろうが、あいまい過ぎる」と厳しく見ます。 さて、今年の墓参りを済ませた皆さんは、どう思われるでしょうか? (関口威人/Newzdrive)