【F1分析】今年のモナコGPはまさに頭脳戦。角田裕毅とRBの、後方の”隙間”をコントロールする戦術を検証する
2024年のF1モナコGPは、まさに頭を使う頭脳戦の様相を呈していた。各車とも、全力で走るのではなく、徹底的にタイヤをマネジメントし、タイヤを最後までもたせようとした。そしてそれだけではなく、敵に塩を贈らないように、徹底的にペースをコントロールし、後方との差を築きすぎないようにする……実に色々なことを考えながらのレースだった。 【動画】オープニングラップに衝撃の大クラッシュ発生! ペレスのマシンは見るも無惨な姿に|F1モナコGP その一例を、8位に入った角田裕毅(RB)のレースペースを見て振り返ってみよう。 今回のモナコGPは、1周目に大クラッシュが起きたことでいきなり赤旗中断。ここで各車はタイヤを交換し、レース中に2種類のタイヤを使わなければいけないという義務を消化した。つまり、レース再開から残りの77周を、1セットのタイヤで走りきらねばならなかったのだ。そのため各車は徹底的にペースを落とし、タイヤを痛めないことに終始した。おかげでレースペースは、昨年よりも1周あたり4~5秒も遅く、それはもう長い長いレースになった。 角田も徹底的にペースを落とし、後方からプレッシャーをかけるアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)を押さえ込んだ。結果的に上位7台に周回遅れとされてしまったが、それでもピットインせずに走り切って8位に入賞。貴重な4ポイントを手にしたわけだ。
■角田が秘めていた、圧倒的なレースペース
このグラフは、決勝レース中の角田(青)、アルボン(紫)、そしてその後方10位でフィニッシュしたピエール・ガスリー(アルピーヌ/ピンク)のラップタイム推移を折れ線で示したモノである。 レース最終盤、角田は一気にペースを上げ、それまで1分17秒台だったラップタイムが一気に1分14秒台まで上がっている。ここから見れば、角田はVCARB01のポテンシャルを全く発揮せぬまま、かなりペースを落として走っていたことがよく分かる。 だったら、もっとペースを上げて走ればよかったじゃないかと思うかもしれない。しかし”引き離さないこと”こそが、角田とRBが採った戦術だったのだ。 レース後に角田は、次のように語っている。 「かなりペースをマネジメントしていました。後ろのマシンがピットストップできなように、あるいは彼らが僕らをアンダーカットできないようにするために、時々ペースを落とさなければいけなかったんです」 ここで角田が言及している”後ろのマシン”の筆頭が、アルボンだ。アルボンがポジションを落とすことなくタイヤ交換を行ない、新しいタイヤで攻め立ててきたら、それまでに貯めていた”貯金”を使ってペースを上げても、角田が抑え込むのは難しくなったかもしれない。 そこで角田とRBが採った作戦が、アルボンを徹底的に抑え込むことだった。モナコGPの舞台はモンテカルロ市街地コース。要所要所を抑えれば、まず抜けないコースだ。そして角田は、アルボンとガスリーの差を考えていた。