オーガニックコットンは、本当にサステナブル?
このようなコットンの育て方による弊害はほかにもある。たとえば、土壌に残った化学肥料が地下水の汚染につながったり、土壌微生物がいなくなり、作物を育てる土壌の力が減少してしまったりすることだ。それは、最終的にそこに住んでいる農家の人々や周辺コミュニティの人々の健康を害することにもなる。 一方で、オーガニックコットンは有機農業で育てられたコットンのこと。有機農業とは、遺伝子組み換え技術を使用せず、自然に存在しない化学肥料や殺虫剤も使用しない育て方のことだ。その土地の生物多様性や地域の条件などに適応しながら作物を育てるため、土壌と生態系の健康を維持・促進し、さらには農家の人々の健康も守りうるところが、オーガニックコットンのいい点といえる(Textile Exchange, 2022年)。 また、オーガニックコットン1トンを収穫すると約978キログラムのCO2が排出されるが、それは従来のコットンよりも46%少ないといわれている(The Soil Association, 2015年)。つまり、オーガニックコットンを選択することは、地球温暖化の加速を防ぐことにもつながっている。
猛暑の洗礼を受けるコットン
■コットン観察日記 7月10日:本葉が育ってきた 今年の夏は梅雨入りが遅いと思いきや、台風が連続して直撃。猛烈な暑さとともに毎日のように起こるゲリラ豪雨や数日つづく曇り空と、これまでの夏の気候と異なっていて、ちゃんと育つか不安になってしまう。 なんだか弱々しい本葉たち。10個の種からここまで枯れずに生き残ったのは、たった4つだけ。「負けるなー!」と声をかける日々。
気候変動に苦しむコットン農家の人々
近年では、気候変動の影響でコットンが収穫できない農家もいる。たとえば、雨の降り方に変化が生じ、頻繁に干ばつや洪水が起きているアフリカのオーガニックコットン農家は深刻な被害を受けている。エチオピアでは、洪水によりオーガニックコットンの農地の約半分が失われたというケースもある。 農家の人々は、農地のまわりに植樹して洪水の被害から守ろうとしたり、土の保湿・保温ができるように稲わらやビニールフィルムなどで土壌表面をカバーし、干ばつの影響を軽減したりなど、気候変動に適応するためにさまざまな工夫を試みている(Textile Exchange, 2022年)。メリットはたくさんあるオーガニックコットンだけれども、このように人の手間もコストも非常にかかるので、簡単に育てることはできない。