白内障手術にかかる費用はご存じですか? 保険適用と自己負担額の実際を解説
白内障手術にかかる費用について
編集部: 白内障手術の費用はどれくらいですか? 湯田先生: 白内障手術の費用は、どんなレンズを選択するかによって大きく異なります。レンズによっては保険適用になるものもありますし、自費になるものもあるからです。たとえば現在最も多く使用されているのは、単焦点眼内レンズです。 これは保険適用となるレンズで、近方・遠方・中間距離など、患者さんのご要望に沿ってどこか1か所の距離に焦点を合わせたものになります。合わせた焦点距離以外をしっかり見たい場合には、眼鏡が必要になります。 編集部: そのほかにはどのようなレンズがあるのですか? 湯田先生: 多焦点眼内レンズといって、2か所以上の距離に焦点を当てたレンズで、近方・遠方・中間距離のうち2か所にピントが合うもの(2焦点)、3か所にピントが合うもの(3焦点)、ピントが合う範囲を少し拡張したもの(焦点拡張型)、近方・遠方・近中・遠中・中間の5箇所にピントが合うもの(5焦点)があります。 多焦点レンズは選定医療または全額自己負担となりますが、選定医療であれば費用を抑えることができます。 編集部: 選定医療とはなんですか? 湯田先生: 治療全体の費用のうち、一部のみ保険が適用になるもののことをいいます。白内障の手術における選定医療では、手術費用が健康保険の適用となりますが、レンズ費用と追加検査費用は自己負担となります。 ただし国内で販売されている多焦点眼内レンズのみ、選定医療となり、外国から個人輸入するレンズはすべて自由診療になります。 編集部: 全額自己負担の多焦点レンズにはどのようなメリットがあるのですか? 湯田先生: 国内で販売されている多焦点眼内レンズにはない、付加価値が得られるということです。 たとえば5焦点レンズと3焦点レンズの違いを考えると、3焦点レンズの場合には距離が1~2mの範囲はぼけることがありますが、5焦点レンズの場合にはそうしたリスクがありません。 しかし3焦点レンズは国内で販売されていますが、5焦点レンズを使いたいと思った場合、海外から個人輸入するしかありません。このように、国内で販売されているレンズにはない付加価値を求めたいと思ったら、個人輸入のレンズを選択することになります。 編集部: 海外から個人輸入したレンズの方が、最新ということですか? 湯田先生: はい。現在日本で販売されている多焦点レンズの大部分は、もとは海外で販売されていたものであり、日本で販売されるようになるまで数年間かかっています。そうしたタイムラグなく、最新の外国産レンズを使いたいという場合には、自費診療ということになります。 編集部: それぞれ費用はどれくらいかかるのですか? 湯田先生: 保険適用の単焦点眼内レンズの場合、3割負担であれば片眼で約4万5000円になります。しかし自由診療の多焦点眼内レンズは使用するレンズや医療機関によって大きな差があります。目安として片目30~100万円と考えると良いと思います。 ただし、医療機関によって大きく異なるため、それぞれのレンズのメリットやデメリットなどを確認しながら医師に相談するようにしましょう。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 湯田先生: よく、白内障の手術を検討している患者さんに「一番いいレンズを入れてください」と言われるのですが、そもそも「一番いいレンズ」というものはなく、理想の見え方は患者さん一人ひとりにとって違います。 多焦点レンズの場合、確かにメガネを使わずに生活できるようになるかもしれませんが、その一方、夜間に眩しく見えたり、光が滲んだりするハロー・グレアという現象が起きることもありますし、視界のコントラスト感度は低下してしまいます。 視界のコントラスト感度が最も良好なのは単焦点レンズを挿入し、必要に応じてメガネを使用することです。メガネを使いたくないなどの理由から多焦点レンズを選択した結果、視界のコントラストに満足できず、結局単焦点に変更する人も少なくありません。 白内障手術で使用するレンズは、高額だから良いということではありません。自分のライフスタイルなどを考慮しながら、最適なレンズを選ぶことが重要です。