衆院で政治資金規正法の改正議論が始まる:政治とカネの問題解消には遠く
政治とカネの問題からの脱却には遠いか
今後の政治資金規正法改正の審議の過程で、野党は自民党改正案について、踏み込みが足りないと批判を強めていくことになるだろう。それは、「自民党は政治改革に前向きでない」といった認識を有権者の間により広めていくかもしれない。 それがさらなる支持率の低下となることを避ける観点からも、自民党は野党案に盛り込まれた内容を一定程度受け入れ、政治改革に前向きな姿勢をアピールしていかざるを得ないだろう。 ただし、仮に最終的に野党案に近づく形で法案が可決されたとしても、それが「政治とカネの問題」の解決につながるものになるとは思えない。抜本的ではない小粒な改革で終わってしまう可能性が見えてきたのではないか。過去の例に照らしても、小手先の規制強化は、さらなる抜け穴を生み出すことになる。 与野党間での議論は、政治資金規正法改正の具体策に収れんしてきているが、最も重要なのは、長く続いてきた「政治とカネの問題」にここで決着をつけること、国民の間に広がった政治不信を払しょくすることだろう。そのためのグランドデザインをまず十分に議論したうえで、必要な法改正の具体的な議論へと進むべきではなかったか。 この点から、リクルート事件を受けて、1989年5月に自民党が公表した「政治改革大綱」の第2弾を作成すべきだったのではないかと思われる。 さらに、「政治とカネの問題」の温床となっている「政治、選挙には金がかかって当然」という、議員及び国民の間の認識を打ち砕くような強い意識改革を含めた大政治改革が、本来は必要だろう(コラム「国民の信頼回復に向けた政治改革は進むか」、2024年1月9日)。 (参考資料) 「規正法改正、自民の譲歩どこまで 特別委で午後審議入り」、2024年5月22日、日本経済新聞電子版 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英