中途採用にはびこる「お粗末な」経歴詐称の実態 立派な実績なのに「仕事がイマイチ」でバレた嘘
組織をより良くするための“黒子”として暗躍する、企業の人事担当。 その裏側を人事エキスパートとして大手・ベンチャー、日系・外資などさまざまな規模や業種の会社で20年以上奔走してきた、現役の人事部長である筆者が、実体験をもとにひも解く本連載。 【画像で見る】経歴詐称や実績詐称を見抜く有効な方法とは? 連載2回目は、中途採用の現場で実際にあった「経歴詐称」、その顛末です。 ■アメリカの超名門校卒は本当なのか それは私が総合商社の人事部に転職して、間もない頃のことだった。
財務担当役員から、「直接話したいので、至急来てくれないか」と内線が入った。「入社早々、何かやらかしてしまったか!?」と、おののきながら役員のデスクに向かうと、こう告げられた。 「萬屋さん、急で悪いんだが、財務部に所属しているAさんの経歴について調べてくれないか」 「Aさんですか。彼がどうかしましたか?」 役員は少し口ごもりながら話し始めた。 「いやぁ、彼って〇〇大(アメリカの超名門校)卒だよね? しかも前職は超大手メーカーの財務部にいたエリートのはずなんだけど……。
頼んだ資料のアウトプットはイマイチだし、どうも財務のことをわかっていない感じがするんだよ。もしや経歴詐称してないかと気になってね」 「えっ。そうだとしたら非常にまずいですね。すぐにAさんに確認して過去の経歴を調べてみます」 Aさんは、アジア圏出身の外国人男性(40代前半)。私と同じく転職してきたばかりで、いわば同期のような存在だった。 まさか入社して最初の任務が、同僚の経歴詐称疑惑の解明から始まるとは、想像だにしていなかった。
本人に「この経歴って本当ですか?」と直接問い詰めても、正直に答えるわけがない。まずはアメリカ超名門校卒の真相をつかむため、「卒業証明書の実物を見せてほしい」と依頼した。 Aさんは数日後に、証明書を提出。だが、どうも怪しい臭いを感じた私は、本人の了承を取りつけて、大学側に在籍確認を行った。すると、「卒業生にそんな人物は存在しない」とキッパリ。悪い予感は的中してしまった。 すでにこの時点で「黒」と判定できたが、念のため前職の人事部にも問い合わせると、案の定、在籍の記録はないという。これらの事実をAさんに突きつけると、いよいよ観念し、経歴詐称をしていたことを認めた。