中途採用にはびこる「お粗末な」経歴詐称の実態 立派な実績なのに「仕事がイマイチ」でバレた嘘
■開発者を装う「実績詐称」まで登場 経歴詐称も問題だが、嘘の実績を語ってアピールする、「実績詐称」も厄介だ。 これは、私自身がとあるベンチャー企業で中途採用をしていたときのこと。経験豊富なマーケティング職を募集したところ、40代男性が応募してきた。 経験も実績も申し分ない。「これは期待できそうだ」と、早速私と部下の人事2名体制でオンライン面接を行った。 その男性は、大手メーカーの商品企画部に在籍し、数々のヒット商品を連発。自らを、ヒット商品を開発した一大プロジェクトのリーダーであり、会社に多大な利益をもたらした功労者だと語っていた。
ただ、こちらからの質問の隙を与えないほどの饒舌な話しぶりが、かえって不自然に感じた。相手の息つぎのタイミングでようやく食い込んだ質問に対しても、浅い答えしか返ってこず、「これは嘘だな」とピンと来た。 私は彼の話を笑顔で聴きつつも、こっそり画面の下で、部下にチャットを送った。 「この応募者の名前をネットでサーチしてくれないか?」と。 すると、すぐさま「検索しても何も出てきません!」との返事があり、やはり睨んだ通りだと思った。ヒット商品の生みの親とも言える人物が、検索して何も出てこないはずがない。
おそらく商品企画部に在籍はしていたのだろうが、プロジェクトに何らかの形で関わったメンバーの一人にすぎないのだろう。 面接でアピールするのは、私はいいことだと思うが、嘘を盛り込んでまで実態より大きく語ってもらっては困る。無論、彼の選考はここでストップ。面接時間を予定よりも30分早くクローズした。 コロナ以降、オンライン面接が中心となり、こうして面談中にリアルタイムで本人情報を調べられるようになった。毎回ではない。怪しい人物だと感じたときだけ実行している。
■経歴詐称を防ぐリファレンスチェック こうした経歴詐称や実績詐称を防ぐためにも、「リファレンスチェック」は有効だ。 リファレンスチェックとは、直訳すると「身元照会」になる。応募者の職務経歴や実績に虚偽がないかどうか、本人の同意を得た上で前職の上司や同僚、部下などに確認できる仕組みだ。 Aさんの経歴詐称問題から警戒心が一層増した私は、とくに管理職の採用時において、「リファレンスチェック」を導入するようになった。