ネタは栃木一本、ひな壇番組でも目立てない――U字工事、それでも“消えない理由”
大量生産、大量消費――。昨今のお笑い芸人には、こんなフレーズが当てはまるかもしれない。2000年代、『エンタの神様』『爆笑レッドカーペット』などが隆盛し、幾多の芸人が瞬く間にスターになった。その反動で、消費のサイクルはスピードを増した。飽和状態によってネタ番組は収束し、芸人がテレビから溢れ出てしまった。そんな時代に身を置きながら、U字工事の二人、福田薫(43)と益子卓郎(43)はしぶとく生き残り続けている。地元の栃木ネタに特化した漫才で2008年末の『M-1グランプリ』で決勝に進出して以降、昨年のコロナ禍を除けば最長の連続休日は3日とオファーが絶えない。“消えない理由”を探った。(文:岡野誠/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
ビジネス訛りって言われたら、それまでなんですけど
栃木ネタだけで持つのか――。ブレイクから13年、U字工事は悩み続けてきた。名産のかんぴょう、宇都宮駅前の餃子像の破損、魅力度ランキング最下位の話題は使い古してしまった。地元紙の下野新聞や統計資料、県史を読み込んでも、斬新なトピックにはなかなか巡り合えない。 福田:「また同じこと言ってしまってるな」とよく思いますね。 益子:面白くなるモノって、たくさんあるわけじゃない。 福田:梨の農家さんから「使ってくださいよ」と言われるんですけど、普通に美味しいから難しくて。 益子:栃木ネタを封印して、新しいパターンを生み出そうと焦っていた時期もありました。 福田:“どんなことにも感謝する”というネタができた時、ライブで一緒になったサンドウィッチマンさんに「すごいの作ったんで、見といてください」と宣言しました。そしたら、すげえ滑って。何も聞かずに帰りました。 益子:おめえ、すぐ帰ったよな。俺も追い掛けるように楽屋を出て行きました。結局、栃木以外見つからないし、1個あるだけでも恵まれていると思います。
漫才に使える目新しいネタが見つからなくても、情報収集の継続は仕事に活きた。今年3月12日放送の『マツコ&有吉 かりそめ天国』では、「崎陽軒の『シウマイ弁当』は創業者が栃木県鹿沼市出身のため『シューマイ』が訛って『シウマイ』になった」などロケ先のあらゆる情報に栃木ネタを被せ、有吉弘行に「栃木1本でずっと面白い」と言わしめた。 福田:有吉さんが褒めてくれて、最初の2秒ぐらいすごくうれしかった。でも、3秒経つと次つまらないこと言ったら迷惑を掛けるなって。 益子:気抜けねえなって思う。『有吉の壁』で新しいキャラクターに挑戦する時も、良いところを探してくれるんですごく助かってます。 現在もロケや地元番組の収録などで月5回ほど帰郷しているが、東京に移住して24年が経過。そろそろ栃木訛りが取れてもおかしくない。