ネタは栃木一本、ひな壇番組でも目立てない――U字工事、それでも“消えない理由”
ゴールデンで冠番組を持てる器じゃないから、なんでもやらないと
益子:人に気を許すまで1~2年掛かっちゃいますね。仲良い芸人があまりいないから、ひな壇は大の苦手です。全然、話に入っていけない。だから、飲み会に参加したほうがいいと思うんですけど、それより早く家に帰りたい。 福田:そうだな。腹括っていけば、まあまあ俺はやると思います。すごく気を張れば、酒がなくなったらすぐ注いだり、盛り上がってない人がいたら話し掛けたりできます。それを自然にこなせるといいんでしょうけど、「しゃべんなきゃ」と思っちゃうと……。だから、「帰っちゃうか」と。 益子:福田はたまに飲み会に来ても、何も言わずに突然帰るんですよ。 福田:作家さんに「売れてる先輩にかわいがってもらいなよ」と言われたこともあるんですけど、本当に苦手で。
飲み会は頑なに断っても、キャリアを積んだ芸人が拒否しそうな仕事は積極的に受ける。11月8日放送の『有吉ゼミ』では21歳のなにわ男子・高橋恭平、27歳の田原可南子、31歳の蛙亭・イワクラとともに、43歳の福田が『激辛フカヒレ麺』に挑戦。若手のような役割も全く意に介さない。 福田:ゴールデンで冠番組を持てる器じゃないから、なんでもやらないと。 益子:なんで断らないか? ……そんなこと考えたこともなかったですね。 福田:建設関係の仕事をしていた父親に「棟梁になれるヤツは若くてもなれる。年齢は関係ない」って言われたんですね。俺は棟梁タイプじゃないなと20代の頃に察しました。 益子:言っていいんかな。天下取りたいと思ったこと、俺は1回もないですよ。周りにレベル高い人がたくさんいるから、気づくんですよね。
弱肉強食の芸能界で野心を持たず、売れっ子に取り入ろうともしない。ネタは栃木一本、ひな壇番組でも目立てない――。それでも“消えない理由”をどう分析しているか。 福田:才能が少ない分、2人で力を合わせてきたからですかね。特に僕はあんまり自信がないんですよ。 益子:もともと目立ってないだけだと思います。突然人気がすごく上がると、ちょっと出なくなっただけで何か言われますからね。逆にいえば、タレントとしてのランクも上がっていない(笑)。 福田:出られるうちはテレビで頑張って、将来も漫才やりながら飯食えたら何も言うことないですね。 益子:68歳ぐらいになったら営業で週1本漫才して、たまに「1カ月休みもらっていい?」と気軽に言えるようになりたい。何の悩みもない状態で仕事してみたいですね。 福田:今は1週間後のネタはどうしようかって、常に心に引っ掛かってるもんなあ。 益子:最近、小3の子供が悩みのタネなんですよ。どぶろっくのファンで、家の周りで「大きなイチモツをください」とか「女をヒイヒイ言わせる」とか大声で歌ってるんです。俺、どぶろっくにクレーム言おうかと思って。なんかPTAの気持ちがわかってきました。 客観的に自分たちの力量を把握し、素直さと頑固さの絶妙なバランスを保つ。目標や笑いのツボという根底的な価値観を共有しながら、これからもU字工事は芸能界の荒波を泳いでいく。 --- U字工事 栃木県立大田原高校の同級生として知り合い、栃木弁の漫才を始める。当時からアマチュアとしてローカル番組に出演。2000年、正式にコンビ結成。2008年のM-1グランプリ決勝進出を機に一気に全国区へ。2011年に漫才協会入会。2017年には第28代真打ちに昇進した。現在、とちぎ未来大使に任命されている。