「美しい日本語に触れたくて、“原文チャレンジ”中!」|仕事と美容、そして人生。浅野ゆう子「待てば、甘露。」
「読書は心の美容液」美しい日本語に触れたくて、“原文チャレンジ”中!
本をよく読みます。小学1年の夏、父が買ってくれた『ドリトル先生アフリカゆき』を読み、読書の面白さに目覚めました。10代になると、書店の売れ筋ランキングを見ては気になる本を買って読んでいました。当時読んで、大人になった今でも面白いと思うのは、『赤毛のアン』シリーズ。くせ毛コンプレックスなのでアンに共感しているのかも?(笑)。『星の王子さま』は読む度に切なくて、そういう気持ちをなくしてしまったから切なさを欲しているのだろうか…と思う程。自分の中の純粋な部分に戻れる感覚があります。 【写真】この記事で紹介した、白コーデに包まれた浅野ゆう子さんのリラックスショットはこちらから! 自己啓発や生き方に関する本はあまり読みません。かつては素敵な言葉との出合いもありましたが、あるとき、「人生は人それぞれだ」と思うと本の内容に自分を委ねてしまうことに逡巡してしまいました。そして、道標にするのなら信頼している方の言葉にしようと思うように。以来、専ら小説を読んでいます。 20代は村上春樹さん、宮本輝さん、40代になると山本周五郎さんの時代小説を耽読しました。山本周五郎さんの作品は視点も文体も優しく、切った張ったではない、どの時代でも変わらない大切なテーマに心が洗われます。 「私だったらどの役を演じたいか」と想像しながら読むのも楽しいんです。30~40代は読んだ本の映像化を企画・提案し、ドラマ化が実現したものもあります。小池真理子さんの短編『間違った死に場所』もそのひとつ。不倫相手に請われて彼を殺した愛人が、彼の遺言によって正妻と娘との陰謀に巻き込まれるサスペンスで、愛人を私、正妻を故・野際陽子さん、娘を室井滋さんが演じました。 10年前に引っ越しする際、蔵書をほとんど処分し、Kindleに移行しましたが、残した本で特に思い入れのある1冊が、レイモンド・カーヴァーの短編集に収められた『ささやかだけれど、役にたつこと』。村上春樹さんの翻訳で初めて読んだのは34歳のときです。息子を失った母親と孤独なパン屋の話ですが、「つらいときこそ食べることだ」と、パン屋が母親にパンを差し出すシーンがとても染みました。絶望の淵にいても、人は誰かの一言や些細なきっかけで前を向けること、当たり前に日々を送ることの尊さを感じて、繰り返し読んでいます。 寝る前など、クールダウンしたいときは平安文学の傑作『源氏物語』や南北朝時代の軍記物『太平記』など日本文学の名作を原文で読むこともあります。原文は難しいので、読み始めるとすぐに眠くなるのも良くて(笑)。日本の美しい言葉に触れられる原文チャレンジ、意外とおすすめです。 悲しみに浸って泣きたい、今の幸せをかみ締めたい…など、その時々の思いに沿った本に不思議と出合えます。でも、読む度、役者という仕事をしているにもかかわらず、自分が使う言葉は意外と少ないことを痛感します。せっかく美しい日本語を当たり前のように使えているのだから、日常でもキレイな言葉をもっと使いたいものです。本を通して美しい言葉や表現に触れることは、心の美容にも確実に効くと思います。
Beauty Tips
直木賞候補作を読んで受賞作を予想するひとり遊びにハマっています(笑)。最近では永井紗耶子さんの『木挽町のあだ討ち』、万城目学さんの『八月の御所グラウンド』が面白かった! Profile あさの・ゆうこ/ 1960年兵庫県神戸市生まれ。デビューから50 年目のライブ、「YUKO ASANO 50 th ANNIVERSARY SHOW『KANSYA 』」を2025年1月18日に大阪、26日に東京で公演。