五輪選手への誹謗中傷に松尾潔が警告「指先で人命奪う実例見ているはず」
細かく分析しているわけではありませんが、言っていることに正当性があるかのような誹謗中傷が多く見られるそうです。これはネットの匿名性というところに乗っかりすぎだと思います。例えば、自分の身近な友達、同級生とか近所の方で、一生懸命スポーツをやっていて、試合に負けたときに、面と向かって叩く人っていますか? 目の前で叩かない、知り合いは叩かないとなると逆のことが分かりやすく浮かび上がります。つまり、実際に会うことがない人、知り合いじゃない人を思いっきり叩いているということですよね。もっと言うと、それまであなたの人生に何か関係ありましたか? 関わりがありましたか? という人です。これは本当に国を挙げて、こういう悪習を排除しなきゃいけないと僕は思います。でないとこの国はディストピアに向かってしまいます。 ■しくじった人を軽視する自分の気持ちに気づいても決別する機会に 人間というのはもちろん完全な生き物ではないので、意地悪なところや弱いところがあらかじめ備わっています。これはもう人間が人間であることのリスクなのかもしれません。聞くところによると、スポーツ以外にも、例えば進学や就職、結婚や恋愛、こういったことに残念ながら失敗というかしくじってしまった人をどうしても軽視してしまうという心理傾向は珍しいことではないそうです。 オリンピックやスポーツで「勝って当然」と思われていたような人が、そうではない結果に終わったとき、そこに加速度がついてしまうといいます。自分にもそういうところはないだろうかと考えてしまうんですが、その結果、心当たりがあることを恥じることもないと僕は思うんです。 そう思ってしまう「気持ちの発露」と、「実際に口にする」ことはすごく距離があるので、思ってしまったときにそれを恥じる気持ちがあって、そこでぐっと飲み込めば、もしかしたらその人はむしろ新しいステージに行けるかもしれません。「自分の中にこういうところがあったんだ。じゃあ、この芽を潰さなきゃ」と思う機会、そういう自分と決別するいい機会とも言えなくはないので。