北國銀行、「預金型ステーブルコイン」を開始──能登震災復興にも一役【取材】
世界のステーブルコインをリードするテザー社とサークル社
ステーブルコインは、ブロックチェーンを基盤に法定通貨に連動するデジタル通貨で、米テザー社とサークル社が先行して米ドルに連動するステーブルコインを開発した。テザーが発行するのが「テザー(USDT)」で、サークルは「USDコイン(USDC)」。 USDTとUSDCは、イーサリアムやポリゴン、アバランチ、ソラナなどの10を超える主要なパブリックブロックチェーン上で機能し、海外では暗号資産(仮想通貨)取引などで日常的に利用されている。 アフリカや南米では、銀行口座を保有していなかったり、基本的な銀行サービスを受けることのできない個人が多くいる。加えて、自国の法定通貨が慢性的に不安定な国では、現地通貨の代わりに、米ドルに連動するステーブルコインを利用するケースが増加している。 USDTは世界最大の米ドル連動型ステーブルコインで、流通量は1000億ドル(約15兆円)を超える。USDCの流通量は310億ドル(約4.7兆円)で、世界で2番目に大きい。両ステーブルコインともに、価値を米ドルにペッグするために準備金(リザーブファンド)を組成している。ファンドは現金と短期米国債などで構成され、USDCのファンドは、資産運用で世界最大のブラックロックとニューヨークメロン銀行が運用している。 海外では、暗号資産取引サービスや外部ウォレットを利用して、ステーブルコインを現地通貨に換金することも可能だ。また、世界の大手銀行やSWIFT(国際銀行間通信協会)などで形成される従来の国際送金システムとは異なり、ステーブルコインは、ブロックチェーン基盤のレールで安価なピアツーピア(個人間)の国際送金を可能にする手段として注目されている。
日本で「電子決済手段」と呼ばれるもの
USDTとUSDCの利用ケースが増加するなか、日本では昨年2023年に「電子決済手段」を扱う事業者に対する法律が改正された。 日本の法律に「ステーブルコイン」という文字は使われていないが、いわゆる日本版「ステーブルコイン」を発行することが可能となった。 ステーブルコイン(電子決済手段)は、パブリックブロックチェーンで法定通貨を裏付けに発行され、法定通貨での払い戻しが約束されているものと定義されている。一方、プライベートブロックチェーン上で発行され、銀行口座の保有者など特定の利用者のみが使えるものは、「預金トークン」などと呼ばれ、定義上は銀行預金の分類に入る。 北國銀行のトチカは、同行の口座保有者が対象となり、プライベートブロックチェーン上で発行されることから、預金型デジタルマネーの範疇に入り、USDTやUSDCとは異なる。 サークル社は、USDCの定義を「米ドルと同等の価値を持ち、常にステーブル(安定的に)に米ドルに換金できる法令を遵守したデジタルマネー」と説明している。トチカも日本円と同等の価値を安定的に持ち、常に現金に換金できるという面では、ステーブルなデジタルマネーということになるだろう。 パブリックブロックチェーンとは:パーミッションレス型(Permissionless)と言われるもので、自由参加型のブロックチェーンのこと。不特定多数のノードがブロックチェーン上の取引を検証・承認する。一方、プライベートブロックチェーン(許可型=Permissioned 型)は、金融業界などで採用が期待される形態で、身元が明らかで、管理者に許可されたノードのみがネットワークに参加可能な、取引の承認を複数の限定的なノードが行う。参加者に対する一定の信頼が前提となり、運用・管理の面(特にコンプライアンスやセキュリティ)などの対応がしやすくなる(日立製作所より)